とはいえ、メジャーリーグでは複数の選手が対象となっている永久欠番の事例も過去に存在する。近代メジャーでの黒人選手第1号としての功績をたたえられて全球団共通の永久欠番となっているジャッキー・ロビンソンの42番を除いても、ヤンキースの8番(ビル・ディッキーとヨギ・ベラ)、カブスの31番(ファーガソン・ジェンキンスとグレッグ・マダックス)、エクスポズの10番(ラスティ・スタウブとアンドレ・ドーソン)が永久欠番を共有している。

 このうち、最もイチローとジョンソンの事例に近しいと思われるのはカブスのジェンキンスとマダックスだろうか。ジェンキンスはカブス時代の1967年から72年まで6年連続で20勝以上をマークし、71年にはカブス史上初のサイ・ヤング賞投手を獲得し、引退後の91年にはカナダ人として史上初めて殿堂入りの栄誉に浴した。マダックスはメジャーデビューした86年から92年までカブスでプレーし、92年にはサイ・ヤング賞に選出されるなど、メジャー通算355勝のうち133勝をカブスで挙げた。

 マダックスのメジャーデビュー当時、ジェンキンスはすでに引退していたが背番号31はまだ永久欠番に指定されていなかった。カブスの31番が永久欠番となったのはマダックスの引退翌年である2009年。この時にジェンキンスとマダックスの両名をともに対象とすることをカブスは発表している。

 カブスは恐らくマダックスの引退を待ち、満を持してジェンキンスとの共有での永久欠番とすることを内定していたのだろう。現役選手がつけている(球団在籍時につけていた)背番号を永久欠番とすることを避けたのは理解できる心情だ。

 この例からマリナーズが背番号51を永久欠番とするとすれば、タイミングはイチローの引退直後が濃厚と思われる。前述のようにジョンソンもイチローもその栄誉にふさわしいだけの実績を残しており、両名が永久欠番となることに異論はどこからも出ないだろう。イチローの引退が前提と考えると若干微妙な気持ちにはなるものの、やはり背番号51がマリナーズの永久欠番となる日が来るのを待ち遠しい。そしてその時が来たら、引退後もファンに楽しみを与えられるイチローの偉大さをあらためて噛み締めようと思う。(文・杉山貴宏)