1.ボールを失った瞬間のディフェンス

 サウジアラビアは基本的にボールを正確につなげることをベースに組み立てており、理想はシュートで終わることだ。ボールを失ったらそのエリアにプレッシャーをかけて限定し、可能ならボールを奪おうとする。しかし、そこでうまくファーストパスを出されて受け手の選手に前を向かれると、下がりながらのディフェンスにギャップが生じやすい。

 そこからうまくスペースでボールを運ぶことができれば、ディフェンスラインが整わないままサウジアラビアの自陣深くまで行き、最後はセンターバックが身体を張るしかないような状況に持ち込める。そうした状況を予防するフィルターのような存在がアンカーのオタイフだ。フランス代表のカンテを連想させる、1人で中盤の広域をカバーしてしまう視野と機動力と備えており、中盤で相手がボールを持てばタイトなディフェンスで対応する。だが逆に、それを利用してオタイフを外すことができれば、一気に危険なフィニッシュまで持ち込むことが可能だ。

2.たまに集中を欠くセンターバックコンビ

 ピッツィ監督がロシアワールドカップ後に最もメンバー変更を加えたのがセンターバック陣で、長くサウジアラビアを支えたオサマ・ハウサウィ、オマル・ハウサウィなどが外れており、ロシアワールドカップ組から残ったアルブライヒを軸にチームを構築している。攻撃面ではバックラインから正確なパスで組み立てるスタイルにマッチし、またスピード面でも高い位置から守るには向いているアルブライヒだが、いざ深い位置で耐える状況になった時にFWの瞬間的な動き出しを捉え切れない傾向がある。

 日本のFW陣では、別メニュー調整が続く大迫勇也のスタメン出場が微妙な状況となっているが、サウジアラビアのセンターバックに対しては武藤嘉紀や北川航也の特徴がむしろ生きる可能性がある。流れが向けば南野拓実がファーストタッチからターンで裏に抜け出し、ペナルティエリア内でサウジアラビア守護神のアル・オワイスと1対1の状況を作り出せるシーンもあるだろう。

 また、サウジアラビアのセンターバックは、サイドバックの内側から自分たちの背後を狙う動きに弱さがあるため、堂安律がタイミングを見て飛び出し、柴崎岳などからラストパスを受ける形を作れば得点チャンスが拡大する。

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まだ1点も決めてないセットプレーが武器になる?