3.セットプレーの守備にもろさが

 現在のサウジアラビアはスピードとテクニックをハイレベルに兼ね備える選手を多く起用しており、全体的にサイズが小さめ。カタール戦のスタメンを基準に見ると、187cmのGKアル・オワイスを除き、身長が180cmに達するのは2人のセンターバックと左サイドバックのアル・シャムラニの3人。4番目がオタイフの177cmで5番目がアルモカハウィの174cmだ。

 空中戦はサイズだけで勝敗が決まるものではないが、普段は日本にとってそれほどアドバンテージではない分野がサウジアラビア戦では強みになりうる。サウジアラビアはロシアワールドカップの時と違い、セットプレーの守備をゾーンで行なっている。例えば、コーナーキックで相手がペナルティエリア内に5人いる場合の役割は下記の通りだ。

アル・ファティル 180cm 中央エリア
アルブライヒ 182cm 中央エリア
アル・ムワッラド 168cm ゴール前ニアサイド内側
アルモカハウィ 174cm ゴール前ニアサイド外側
オタイフ 177cm 中央手前
アル・ブライク 173cm 中央手前
アルシェフリ 165cm 中央遠め
アル・シャムラニ 180cm キッカーの壁
バフブリ 170cm ショートコーナーのマーク
ガレーブ 164cm カウンター要員

 こうした役割で守っていたが、基本的なサイズ不足に加え、少しポイントをずらして来たボールに対する瞬間的な反応が遅れ、カタールのターゲットマンにことごとく先に触られていた。日本代表の選手たちは明言こそ避けているが、確実にスカウティングに従うセットプレーの準備を仕込んでいるはず。今回のアジアカップではまだセットプレーからの得点がない(PK除く)が、ターゲットになる選手はもちろん、柴崎や堂安、伊東純也らキッカーにも期待だ。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の"天才能"」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。