その後も、官民ファンドができる時には、必ず「産業再生機構のように」というのが枕詞になっている。しかし、それは、あくまでも「形をまねる」ということにしかならないのは、これまでの官民ファンドの失敗の歴史から見ても明らかだ。姿はマネできても、「魂」を入れることは容易ではない。「魂」を制度で保証することは無理なのだ。関係者の言わば命懸けの覚悟が揃うかどうかがカギだが、よほどの幸運が重ならないとそんなことは起きない。

 谷垣大臣という高潔な大臣が重石となり、民間人も絶対に介入を受け付けないという強い決意を持ち、出向した官僚も親元と本気で戦うという三つの要素が揃ったのは、ある意味、ただの幸運だったかもしれない。私も、再生機構の執行役員として、親元の経産省と戦っていたことで、その不興を買い、産業再生機構から1年で経産省に戻され、地方に飛ばされそうになったことがある。その当時は、小泉純一郎総理秘書官の飯島勲氏が、経産省に圧力をかけて、何とか飛ばされずに済んだが、そういう幸運はそう続くものではない。

 ましてや、今の大臣は世耕氏で、谷垣氏とは実力でも人間の器でも雲泥の差だ。総理秘書官が正しく動いてくれることも想定できない。どう考えても、JICは即刻廃止。他省庁のダメファンドも同時に廃止した方が良い。そうしなければ、数千億円あるいは兆円単位で国民負担が生じるだろう。(文/古賀茂明

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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