それでも彼女の大きな長所である滑りや動作のしなやかさ、観客の気持ちも引き込んでしまうような表現の豊かさは彼女の持っているポテンシャルの高さを示すものだ。フランス国際のフリーは前半の3回転+3回転が3回転+2回転になり、3回転サルコウと連続ジャンプの3回転フリップが2回転になったり、他にもふたつの回転不足を取られて123.24点で6位の得点だったが、演技構成点は5項目すべてを8点台にして65.68点を獲得し、合計で2位になった三原には0.26点差、優勝した紀平には0.37点差。ジャッジもその滑りの資質を認める結果だったのだ。

 本田はもともと身体能力も高く、どんな競技でもすぐに習得できてしまう非凡な運動センスの持ち主だ。だが、その天才肌ゆえに練習に熱心に取り組まないと指摘されていた。ジャンプも他の選手が必死に跳び込んでそれを自分のものにするが、彼女の場合は簡単に身に付けてしまう。それゆえに、試合では気の緩みが出てしまうのだろう。

 米国では兄の太一と一緒に暮らして練習に励んでいるが、まだその環境に慣れきっていないというのが現実だろう。そんな中でこれから彼女がどう自分を見つめながら練習を積み上げていくのか。しっかり我慢して取り組むことができれば、本田の大きな開花は可能だろう。

 そうなれば紀平や宮原知子、坂本花織、三原舞依、樋口新葉などと激しく北京五輪代表を争う構図になり、日本女子フィギュアのさらなるレベルアップにもつながるはずだ。(文・折山淑美)