「今までの受験データが通用しなくなる可能性があります」

 どういうことか。実は、これまで女子率が高めな大学には「共通点がある」というのが予備校関係者のもっぱらの意見だ。

■試験科目や配点比率での“調整”も

 まずは偏差値。女子は男子よりも浪人を敬遠する傾向があるため、偏差値が62前後で、難関大よりも入りやすい大学を目指す傾向が強い。また一般的に、女子は男子よりも国語が得意な受験生が多いため、センター試験の国語の配点が高い国立大学、たとえば愛媛大や島根大、滋賀医科大などの女子率が高い。

 一方、英語、数学、理科2科目で受験することが多い私立大学はどうか。医学部予備校メディカで数学講師を務める亀井孝祥代表は、こう見ている。

「あくまで一般的な話ですが、女子は数学が苦手な生徒が多いです。以前はそれほど数学が難しくなかった岩手医科大、金沢医科大、聖マリアンナ医科大、杏林大、東邦大などでは、数学が難しくなり、女子が合格しにくくなっています。東京医科大も18年は極方程式で対応させる難問が出ました。今後も数学が難化していく可能性は高いですね」

 ここ数年の数学の問題の傾向について亀井さんは、新課程で学ぶ複素数平面やデータ分析の問題は、旧課程で学んだ生徒より新課程で学んだ生徒の方がいい成績だという。

「新課程で学ぶ分野にウェイトをかけられると、多浪生には厳しい入試になる」(亀井さん)

 医学部予備校ウインダムで物理講師を務める三輪伸之代表も同様のことを口にする。

「女子は英語、生物が得意な一方で、数学が苦手だという生徒が多い。今後は英語の配点比率を下げたり、数学を難しくしたりする可能性も否定できません」

 また、医系専門予備校メディカルラボ本部教務統括で生物講師の可児良友さんは、こう見ている。

「近年、女子選択が多い生物が難化した大学が増えました。今後は“得点操作”が許されないため、女子が苦手な数学、女子の選択が多い生物を難しくする大学が増えることも考えられます」

 今後、得点操作などの不正がなくなったとしても、将来的には配点比率などで事実上の“調整”があり得るのでは、というのが予備校関係者の見立てだ。これらは無論、不正には該当しない。ただ、そこまでの憶測が飛ぶほど、医療界にとって長年の課題である医師不足や地域の偏在などが根深く、大学側も人材の確保に苦慮しているといえよう。しかし、不正は不正。一度、失墜した信頼を取り戻すためにも、大学側には膿を出し切ってもらうことを望みたい。また、国には女性医師が働きやすい仕組み作り、地方の医師不足を解消する政策などを早急に考えてほしい。

(文/庄村敦子、井上和典)