10日、会見の冒頭、頭を下げる順天堂大の新井一学長(右)と代田浩之医学部長(c)朝日新聞社
10日、会見の冒頭、頭を下げる順天堂大の新井一学長(右)と代田浩之医学部長(c)朝日新聞社

 入試倍率「10倍」「20倍」は当たり前。私立大を中心に医学部人気は近年「沸騰」状態にあり、高倍率化が進んでいた。その人気の“火付け役”こそが、順天堂大だったといっても過言ではない。理由は後述するが、10日、その順大も女子を不利に扱う「不適切入試」を行っていたことが判明した。

 文部科学省による医学部入試の調査で不正の疑いが浮上した順大が10月に設置した、弁護士らで構成される第三者委員会。その聞き取り調査で、順大側はこのように説明したという。

「女子が男子よりも精神的な成熟が早く、受験時はコミュニケーション能力も高い傾向にあるが、入学後はその差が解消されるため補正を行う必要があった」

 これに対し、同委員会は「合理性がない」とバッサリ。医師になることを夢見て純粋な気持ちで受験する女子生徒たちとは裏腹に、大人たちの“言い訳”は通用するわけもなく、同大による10日の「不適切」会見につながった。さらにこの日、北里大も入試で女子を不利に扱っていたことを公表。11月末までに判明していた東京医科大、昭和大、神戸大に続き、12月8日には岩手医科大、金沢医科大、福岡大の3大学が次々と不適切な取り扱いがあったことを会見で明らかにした。北里大と順大を加えて、計8大学が「不適切入試」を明らかにしたことになる(12月11日時点)。

 一連の不祥事に順大の名が挙がったことは、今後、尾を引くことになるかもしれない。なぜなら、前述したように、昨今の医学部人気を牽引したのは順大の影響が大きいからだ。その理由は、2008年、順大の「学費の大幅値下げ」に遡る。

■学費値下げで志願者増も、同時期に「不適切入試」

 私立大医学部の学費は6年間で2千~3千万円台がほとんどで、現時点で最も高いのは川崎医科大の4700万円超だ。学費の高額化が叫ばれるなか、順大が2008年に打って出た策が、学費を6年間で900万円も値下げすることだった。このインパクトは大きく、結果、志願者が急増し、偏差値も上昇。医学部「御三家」と呼ばれる慶應義塾大、東京慈恵会医科大、日本医科大のうち、近年、難易度で順大が日医大を上回り、慶應大、慈恵医大、順大が「新御三家」と呼ばれるまでになったのだ。すると、順大のあとを追うように、昭和大など他大も次々に“値下げ合戦”に参加。日医大も18年に570万円の値下げに踏み切ると、順天堂大より難易度が高くなった。このように、順大の学費値下げから医学部全体の難易度の底上げにつながった経緯がある。

 だが、順大が「不適切入試」をし始めた時期が、遅くともこの2008年度からだったことも明らかになった。「学費値下げ」に踏み切って耳目を集めたタイミングと同じなのは、あまりに残念な話だ。順大、お前もか――相次ぐ不祥事にそんな言葉が聞こえてきそうだ。

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