明治神宮大会を制した立正大 (c)朝日新聞社
明治神宮大会を制した立正大 (c)朝日新聞社

 11月9日から6日間にわたり行われた第49回明治神宮野球大会。高校の部は来年春の選抜大会の前哨戦、大学の部は卒業する4年生まで含めたチームの総決算とそれぞれ意味合いは異なるが、連日熱戦が繰り広げられた。そこで光るプレーを見せた選手を来年のドラフト候補を中心に紹介したい。今回は大学の部だ。

【写真】明治神宮野球大会<高校の部>では、こんな逸材が!

 投手で大会前から注目を集めたのが最速154キロを誇る大型右腕、杉山晃基(創価大)だ。テイクバックで少し右肩が下がるのは気になるが、軸足にしっかりと体重を乗せて全身を使って上から腕を振れるのが長所。下級生の頃に比べると、上半身の力みがなくなり、球筋が安定してきたように見える。今大会は初戦の関西国際大戦で2本のツーランを浴び、6回を投げて4失点で負け投手になったが、失点した回以外は、完璧に抑え込み無四球にまとめるなど成長を見せた。勝負どころでギアを上げられるのも魅力だ。杉山の後を受けて登板した小孫竜二、望月大希も注目の右腕。今大会は、ともに本調子には程遠いピッチングだったが、素材の良さは申し分ないだけに春以降の復調に期待したい。

 リリーフながらスピードで目立ったのが村西良太(近畿大)だ。173cm、65kgと体は大きくないが、サイドから繰り出す鋭い腕の振りは出色で今大会でも最速149キロをマークした。課題はとにかくコントロール。肘の使い方に柔らかさがなく、リリースポイントが安定しないため、どうしても左右にボールが散らばる。変化球も変化が大きいため、見極められやすい。ただ、しっかり指にかかった時のボールの勢いは申し分なく、ストレートで押せるのは大きな魅力だ。うまく力を抜いて制球が安定してくれば、セットアッパータイプとして面白いだろう。

 野手では、三拍子揃った外野手の谷川刀麻(近畿大)の評価が高い。入学直後からレギュラーに定着し、当初はなかなか結果が出なかったものの今年は春、秋ともに3割を超える打率をマークして成長を見せた。スイングのバランスが良く、力みなく振りだして強く引っ張れるのが長所。初戦の筑波大戦で放ったスリーベースでは12秒を切れば俊足と言われる中で三塁到達11.40秒のタイムをマークした。高校時代はエースで、大学でも投手で登板経験があるように、ライトから見せる返球の強さも一級品だ。今年の成績を来年も続けることができれば、プロ入りが見えてくるだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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