得点力の高さを象徴する数字がある。近年の野球では、ヒットと四球はほぼ同じ価値とみなし、打率よりも出塁率が重視されている。今季の広島は、その理論を証明するシーズンだった。

 広島のチーム打率は.262のリーグ3位。本塁打も175本で2位だった。ところが得点は1位の721で、2位のヤクルトより63も多い。その差に何があるのかというと、四死球である。広島の四死球は1位の701(2位のヤクルトは641)。その結果、チーム出塁率は1位の.349だった。なお、巨人のチーム打率は.257、本塁打152、四死球527、出塁率.325、得点625。打率は5厘しか差がないが、四死球数と本塁打数で広島が巨人を上回り、得点数の差につながった。

 その高いチーム出塁率を得点に結びつけたのが丸であり、若き4番の鈴木誠也(9000万)だ。丸のOPS(出塁率+長打率)はリーグ1位の1.096、鈴木は同2位の1.057。OPSは.900で球団主力級、1.000を超えるとMVP級とされていて、広島は打者だけで2人のMVP候補がいることになる。ちなみに丸の四球数は130でリーグ1位、鈴木誠也は88で同3位だった。

 さらに、5番以降にも松山竜平(6500万)、今季ブレークした野間峻祥(1600万)らが控える。捕手でも、106試合に出場した会沢翼(5000万)が打率.305の活躍で、1番から8番まで弱点のない打線となった。

 巨人では、今季は坂本勇人(3億5000万)が打率.345と活躍。ただ、ケガの影響で109試合の出場にとどまった。 マシソン(3億6800万)も膝の故障で7月下旬から戦線離脱。高橋由伸監督にとって、投打ともに台所事情の厳しい試合が続いた。

 両チームの1億円プレーヤーは25人。うち巨人の選手は16人で、上位10選手のうち9選手を占める。坂本以外の年俸上位の野手は、元日本ハムの陽岱鋼(3億、年俸ランキング5位)が打率.245で本塁打10、昨年の本塁打王である元中日のゲレーロ(3億、同5位)は打率.244、本塁打15と不本意なシーズンに終わった。巨人の投手では、元西武の野上亮磨(1億5000万、同16位)や元ソフトバンクの森福允彦(1億2000万、同19位)も年俸に見合う活躍ができなかった。移籍組の不振は、巨人のコスパを下げる大きな要因となっている。

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巨人を救った生え抜き選手たち