ソフトバンク・武田翔太 (c)朝日新聞社
ソフトバンク・武田翔太 (c)朝日新聞社

 日本ハムに1点を先制された直後の1回裏の攻撃から、ソフトバンクはエンジン全開だった。打者5人、わずか13球で5得点を挙げての鮮やかな逆転劇。日本ハムの先発・上沢直之には今季2勝4敗、チームの対戦打率も.175と苦手で「追い込まれるとフォークもある。そこから打つのは難しい」と工藤公康監督。チームの統一方針は、狙い球を絞り、早めのカウントから打って出ることだった。

 先頭の上林誠知は3球目を打っての左翼線二塁打、明石健志はストレートの四球、初球を打った中村晃は、そのボテボテの当たりが一塁線上でピタリと止まるというラッキーな内野安打となり無死満塁。ここで4番・柳田悠岐が、初球の141キロのフォークを右前へ運ぶ同点タイムリーを放ち「満塁だったので、積極的に打ちに行きました」。

 実は上沢に対し、今季のレギュラーシーズンで18打数2安打の打率.111で「イヤなイメージがあります。全然打ってない」とお手上げ状態だったはずの柳田が、CSの第1打席でいきなりの快打。続く5番デスパイネは、4球目の147キロ、外角高めのストレートを「逆方向へ打った。さすがだと思います」と工藤監督を脱帽させた右翼席への勝ち越し満塁弾。「打った瞬間に完璧な当たり。大事な試合ですごくうれしいよ」と喜ぶ助っ人は、体調不良で12日の全体練習に不参加。まさしく“全快宣言”代わりの一発だった。

 ノーアウトのまま、一気に5得点。これで一気に勢いづいたかに映ったが、そのまま簡単にはいかないところも、また野球の難しいところなのだろう。3回、9番・甲斐拓也の2ランが飛び出し、この時点で6点リードと突き放したソフトバンクだったが、先発の左腕、アリエル・ミランダが4回に崩れた。2者連続で押し出し四球を許して4点差に追い上げられ、さらに1死満塁。本塁打が出れば同点の場面で、迎えた打者は2番・大田泰示。その後も、3番に今季の打率.323の近藤健介、4番は今季106打点の中田翔と、長打力のある勝負強いバッターが続いていく。

 シーズン中の「4回4点差」では、先発投手の勝ち星の権利、リリーフ陣の負担を考えれば、交代させづらい状況でもある。それでも、CSファーストステージは2戦先勝の超短期決戦。過去14度のファーストステージでも、初戦を取ったチームが12度、ステージ突破を果たしている。そのデータが物語るように、先手必勝が鉄則。ここで相手に流れを渡すようなことがあってはならない。「今まで以上に神経を使って、攻めていくのも大事」と継投を決断した工藤監督がこのピンチでマウンドに送り出したのは、プロ7年目の25歳・武田翔太だった。

「1点も取られたくないという気持ちで、マウンドに上がりました。もちろん緊張しましたし、久々に緊張しましたね。点差はありましたけど、なかったら……心臓が飛び出す場面ですよね」

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工藤監督「4回から行けるようにしておいてくれ」