安否不明者の捜索が続く北海道・厚真町吉野地区(撮影・桐島瞬)
安否不明者の捜索が続く北海道・厚真町吉野地区(撮影・桐島瞬)
8月に東京で開かれた国のトリチウム水の公聴会(撮影・桐島瞬)
8月に東京で開かれた国のトリチウム水の公聴会(撮影・桐島瞬)

 北海道胆振地方を震源とする地震から丸3日が経過した。震度7を記録し、広範囲な山崩れが起きて民家が飲み込まれた厚真町吉野地区では、余震が続く8日も10台を超える重機が土砂を掘り返し、安否不明者を捜し続けた。警察の大型ドローンや、航空自衛隊の救助犬も投入した捜索の結果、厚真町7地区では死者31人、心肺停止 2人、安否不明3人となった。

【写真】東京で開かれた国のトリチウム水の公聴会

 道内の停電はほぼ解消されたとはいえ、厚真町の一部では依然として停電と断水が続く。家に損傷がなくても料理や洗い物ができないため、8日午後6時現在で1086人が避難所生活を続けたままだ。炊き出しなどで温かい食事は提供されている一方、通信環境は滞りがち。携帯電話での通話はできるものの通信会社によってはインターネットがほとんど繋がらず、情報の入手ができない不便も強いられている。

 今回の地震では道内全体で一時295万戸に及ぶ停電が起きたが、不安を増長させたのは震度2だった泊村にある泊原発の外部電源が一時的に失われたことだ。北海道電力最大の火力発電所である苫東厚真発電所が緊急停止した影響で他の発電所がダウンしたためというが、一歩間違えれば7年前の福島原発事故のようなことになり兼ねない。

 原発の脆さが改めて明らかになった格好だが、事故を起こした福島第一原発でもそれは同様。汚染水タンクに溜まり続けるトリチウム水の処分方法がいまだに決まらないまま、時間だけが過ぎているのだ。

 1日約220トン発生する汚染水は、トリチウム以外を取り除ける多核種除去設備で処理した後、敷地内のタンクに貯蔵される。現在の貯蔵量は105万立方メートルだが、「タンクを増設しても「あと4、5年で一杯になる」(経産省)。

 このため有識者を集めたタスクフォースなどで処分方法を検討。技術面だけでなく、コスト面や風評被害が発生しないかを議論してきた。

 地層注入、海洋放出、水蒸気放出、水素放出、地下埋設の五つの方法を検討しているが、「事故前まで流してきたし、他の方法と比べてコストも安い」(原子力関係者)という海洋放出が有力とされる。

 だが、地元漁協の同意が得られていないうえ、8月にはトリチウム水に取り切れていない放射性物質が混ざっていたことが明るみに出ると、反発の声が強まった。トリチウム水の中に、排出基準を超えるヨウ素129が昨年度と今年度を合わせて約70回検出され、テクネチウム99も混ざっていたのだ。

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