児童相談所は敷居が高いと感じても、毎日の送り迎えで子どもの専門家である保育士とちょっとした話をするうち、子育てを前向きにとらえられるようになるのではないか。石破さんも、ブログで、私の記事を引用しながら、児童相談所の強化と同時に保育所を活用したシステムの構築が必要だと言及しています。

石破:多くの家庭で親が愛情をもって子どもを育てている。その一方で、子どもに愛情をもてない親がいることも、事実として認めないといけない。ただ、問題を親の資質のみに限定してはいけない。親子にとって「保育所に行けば、助けてもらえるんだ」と感じられる場になるようにしなければなりません。

 子育てに困難さを感じる親の意識をすぐに変えるのは、そう簡単にはいかない。いろんな人がかかわって子どもを育てることが重要です。その意味でも、保育所のもつ役割は大きい。子どもや保護者にとってはもちろん、地域の高齢者にとっても拠り所となるような保育所を作っていきたい。

小林:保育所を利用する親世代には就職氷河期も含まれ、雇用環境が厳しい。安倍政権は、「非正規という言葉をこの国から一掃する」と言うが、男女合わせた非正規労働の比率は全体でも4割に迫る。この状況をどう見ていますか。

石破:企業が人件費を削減するための非正規雇用は、減らさなければなりません。1991年のバブル経済の崩壊を契機にして雇用の非正規雇用化が進み、就職氷河期の年齢層は、40代になっている。非正規労働では、年功序列による賃金上昇も役職による昇進もなく、退職金も厚生年金もない。中年層の非正規労働者は2040年に高齢者になり、大きな集団として登場することになる。

 2040年に日本は危機を迎える。高齢者数がピークに達し、社会保障給付費が現在の1.6倍、介護費が2.4倍、医療費が1.7倍、年金が1.3倍かかるようになる。2040年を見据えて社会保障政策がどうあるべきか議論していかなければならなりません。

小林:「日本創生戦略・石破ビジョン」で、社会保障制度に関する「新たな国民会議」の創設を公約しています。

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