小林:現政権は保育士の処遇改善に取り組んでいますが、保育士の配置については、基準ギリギリでやって一人でも多くの待機児を受け入れようという方針です。しかし、保育士一人当たりが受け持つ子どもの数が減らないと業務負担は減らず離職は止まりません。保育士の配置基準は、0歳児であれば子ども3人に保育士1人(「3対1」)、1~2歳児は「6対1」、3歳児は「20対1」、4~5歳児は「30対1」となっています。処遇改善とともに基準を引き上げて、保育士一人当たりがみる子ども数を少なくすべきではないでしょうか。

石破:厚生労働省は、当然、財源さえ確保できれば配置基準を引き上げたいと考えている。しかし、どうやって財源を生み出すのか。それには、この国の経済を抜本的に見直さなければなりません。

 人口が減少し、高齢化進んでいるため消費が落ち込む。下請け業者が厳しい条件で仕事を得るような状態では当然、非正規雇用も増えて労働者の賃金が低くなり、今、負のスパイラルに陥っています。

 財源確保のために消費税を上げればいいというわけでありません。消費税が上がっても暮らしに困らないことが前提です。いかにして付加価値ある商品を生み出し、それによって企業業績が良くなり、個人所得が増えて消費に回り、税収が上がるか。決して容易でないが、全体の税収を増やしながら、保育士の配置基準を引き上げていきたい。

 当面は、潜在保育士をパートタイム労働として現場に呼び込むことで人員体制を手厚くできないかと思う。保育士が自分の職歴などを登録し、スマートフォンを使って人手の足りない保育所にパートタイムで働けるようなマッチング機能が充実すれば、潜在保育士の活躍の場が増えるのではないか。スキルある潜在保育士も多いはず。そうした人材が働くことで質を維持できるようなシステムを作りたい。

小林:保育所は、親の就労を支えるほか、前述したように虐待の早期発見の役割も担っています。AERA dot.で私は、保育所の役割として、現在、虐待やDV状態であることが明確でなくても保育所を利用できること、保護者の就労を前提としなくても育児の困難さを感じていれば、保育所を利用できるような制度変更があることを紹介しました。

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子育てにいろんな人が関われる社会を