保育所には児童虐待から子どもを救う役割もある。そうした意味でも子どもが頼りにできるところのひとつが保育所である。しかしながら、保育所で虐待が行われてしまうのでは本末転倒で、保育士の処遇をあげることは必要不可欠です。

小林:処遇改善に向け、どのような対策を打ちますか。

石破:保育所は、0歳から就学前までの人格形成に大きな影響を与えます。それを考えれば保育士の処遇は小中学校の教員と同等である必要があります。

 教員の場合は、「人材確保法」によって、一般の公務員より高く給与が設定されている。それにより、優れた人材を確保し、義務教育水準の維持向上が図られていますが、保育士も同様に法で処遇を担保するべきです。保育士の処遇改善のために財源を確保するには、まず、保育士の仕事は就学前の人格を作る重要な役割があるという認識が広まらないといけない。

 質の高い保育を実現するために保育士の処遇を改善する。そのための財源をなんとしてでも作る。たとえば、防衛費の中身を細かく見ていけば、防衛力を弱めることなく費用を見直す余地もある。これは、公共事業でも同じ。すべての予算を効率的に見直すことで、保育の質を上げる財源を確保することは可能です。「なんとしても財源をねん出せよ」と総理が指示すれば実現可能で、私はそう指示します。

小林:保育士の処遇を悪くする要因のひとつに、国が認める「委託費の弾力運用」があるのではないでしょうか。「委託費」と呼ばれる認可保育所に支払われる運営費は本来、人件費比率8割で見積もられていますが、人件費以外にも流用できる「委託費の弾力運用」という制度があるため実際には3~4割しか人件費に使われていないケースがあります。

石破:新たな保育所を作ることを目的に委託費が使われていることが多く、人件費分を流用しようとする動機のすべてが悪とは思いません。保育所運営には、ある程度の弾力運用は必要でしょう。ただ、次の保育所を作ることが優先されて保育士の賃金が抑えられてしまうのは健全とは言えず、両者がトレードオフの関係にあってはいけません。そうならないためにも、新たな保育所を設置する時には、その費用を事業者が委託費からねん出するのではなく、きちんと国で用意することが必要です。

次のページ
保育士不足解消をどうするのか