メルカリ、ヤフオクともに出品者・落札者ともに個人情報を開示せず取引できる匿名配送の機能もある。宿題を「売買」するなど、一見道義に反しているような行為だが、こうした個人情報の有無などが背徳を感じさせることがなく、販売の助長につながっているのかもしれない。また、メルカリはクレジットカードがなくても売買できるため、学生にとっても利用の敷居が低いのかもしれない。

 今回、感想文を見てもらったのは現役の高校国語科教員。800円のメロスの価値はいかほどか。

「正直、絶妙な作文だと思います。作品名にカギ(『』)を付けていない箇所があるのは気になりますが、コンクールに出品するような内容でも段落のミスや誤字脱字はつきもの。この作文の場合、あらすじは簡潔で感想とのバランスが良い。自分の経験が書いてあるのも高評価です。でも、ところどころ主語が抜けていたり、理由表現の物足りなさもある。『ここがもったいないな』と思わせてくる完璧じゃない感じ。この拙さがリアルですね」

 仮にこの作文が提出されたとして、読書感想文コンクールに出品する可能性はあるのか。

「内容はまとまっているので、細かいところを指導して、出品する可能性は高いですね。出品の際に本人が書いたかどうかを確認するわけにもいきません。『疑われてしまった』と生徒が傷ついてしまう可能性もありますし……」

 価格帯についても「1時間程度のアルバイトで買える金額なので、購入する生徒が出るのもわかる」と困惑する。

 実は、「宿題代行」を謳う業者は10年前ほど前から存在している。こちらは完全なプロ集団。ある業者では有名大学・大学院卒業者や塾講師経験者がスタッフとなり、依頼者のニーズに合わせて感想文を作成しているという。ウェブページを見ると書籍の指定もでき、柔軟・迅速な対応が人気のようだ。しかし、その分値段は少々お高め。例えば、記者が購入した感想文(5枚、800円)と同じ枚数で依頼すると代行業者Aでは16,000円と約20倍。クオリティは高いといえ、大人でもためらう高さだった。

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メルカリ対策に乗り出す学校も その方法は?