一方、メルカリ対策に乗り出す学校もある。
関西圏のある高校では提出された読書感想文は返却せず、校内で処分するようになった。
「生徒には『コンクールに出す作文は返せないので、返却と未返却があるのはフェアではない』と説明しています。ただ、それは建前。実際はメルカリへの出品が問題になっているから、対策として返却しないことになりました。とはいえ強制はできないので、手元に残したい人には後から言うように呼び掛けています。今のところ返却を申し出た生徒はいません」
■困難校では読書感想文ではなく「読書感想画」の提出も
前述の高校教員によると、今求められている国語力は「読む」「聞く」「書く」「話す」の4つ。適切なコミュニケーションを取り、日本語で自分の考えを落とし込めるかどうかが問われているという。その中で、読書感想文は「正しく読み、考えを落とし込み、表現する」という創造的な力を見る指標にもなっている。
しかし、学校によっては学力が届かず、感想文を書かせるまでに至らないこともあるという。
「いわゆる困難校と呼ばれる学校では文章を書くことへの指導が追い付いていません。そんな状態で書かせるのは酷なので、『読書感想画』を導入しているところもあります。これも、ネットで購入したり、盗作の可能性もあるので、提出時に『主人公は誰か』『このシーンはどうだったか』という質問をして、読んだかどうかの裏付けをしています」
美術課題ではないため画力は問わず、文章から情景がイメージできているかがポイント。また、任意課題のため成績が悪い生徒にとっては救済措置的な扱いにもなっているという。
そこまでして読書感想文を課す意味はあるのか。
「そこが難しいところです。ただ、感想文自体が慣習化してしまっている。正直、忙しすぎて読書感想文を見切れないこともあるので、出したか出していないかの確認でとどまることも。以前いた高校では生徒同士で輪読させて、投票が多かったものを教員が読み、コンクール出品作を選んでいました。今の状態では生徒も教員もお互いに負担になっている」(前出・高校教員)
教員の長時間労働が問題になっているが、読書感想文のネット販売なども含めて「夏休みの宿題」も見直しが必要なのかもしれない。(AERA dot. 編集部・福井しほ)