奈良大付・木村光 (c)朝日新聞社
奈良大付・木村光 (c)朝日新聞社

 根尾昂、藤原恭大(ともに大阪桐蔭)、小園海斗(報徳学園)、吉田輝星(金足農)、渡邉勇太朗(浦和学院)、野村佑希(花咲徳栄)などがドラフト上位候補として注目を集めている100回記念の全国高校野球選手権。しかし高校生の段階では高い注目度を集めていない選手でも、その後の大学や社会人で大きく花開き、プロで活躍している選手は少なくない。横浜高校の松坂大輔(現中日)が大活躍した20年前の大会では浜田の和田毅(現ソフトバンク)、東福岡の村田修一(前巨人)などが出場しており、鹿児島実のエースだった杉内俊哉(現巨人)もノーヒットノーランを達成しているが、プロから注目されるような選手ではなかった。またその前年の大会でも和田は秋田商の石川雅規(現ヤクルト)と投げ合っているが、当時はこの二人がリーグを代表する投手になると想像した人は少なかっただろう。そこで今回はこの夏の甲子園に出場した選手の中から、彼らのように数年後に才能が花開く可能性を秘めた、キラリと光る素質を見せたダイヤの原石を紹介したい。

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 まず投手で面白いと思わせたのが木村光(奈良大付)だ。172cm、67kgと投手としては小柄な部類に入るが、1回戦の羽黒戦では8安打を許したものの1失点で完投勝利。与えた四球は2で8三振を奪う好投で、チームに甲子園初勝利をもたらした。この日にマークしたストレートの最速は143キロ。140キロ台をマークする投手が珍しくない今大会では特段目立つ数字ではないが、スムーズに上から腕が振れるため上背以上のボールの角度がある。少し重心が上下動するのは気になるものの、躍動感のあるフォームも目立った。実は木村は中学時代までは外野手で本格的に投手に転向したのは昨年秋から。この夏の奈良大会が公式戦初登板なのだ。打っても5番打者を任せられているが、羽黒戦でもセンター前ヒットを素晴らしいスピードでツーベースにして見せた。投手歴が短いにもかかわらずこれだけのスピードと安定感を備えていることは驚きである。このまま投手としての経験を積んでいけば、大学で投手に転向して小柄でもセットアッパーとして大活躍している福山博之(楽天)のようになることも十分に考えられるだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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まだまだ「ダイヤの原石」はいる!