■同期医師との給与格差が3倍に
確かに、結婚や出産を機に大学病院をやめる女性医師はいますが、多くは復職しています。ベビーシッターを雇いながら勤務を続ける医師もいれば、出産後すぐに復帰して第一線で働く医師もいます。さらに、多くの女性医師は、職場や働き方を変えながら医師を続けています。いや、生活を考えれば、そうせざるを得ないのです。東京医大の後期研修医の月収は20万円。残業代などがつくそうですが、これでは生活できないからです。東京医大の経営者にしてみれば「退職」なのですが、当事者の女性医師からしてみれば「転職」なのです。東京医大の経営者は、自分のところで働く医師にしか関心がないのでしょう。
私の大学の同期の事例を紹介したいと思います。彼女は、初期研修医中に出産し、産休を取ったのち復職しました。現在、後期研修医4年目として大学病院に勤務していますが、月収は20万円ほど。子育て中であるため当直はせず、定時勤務にしてもらっているものの、定時では当然ながら帰宅できず、なんとか保育園のお迎えに行っているといいます。また、残業代は出ないため、生活はギリギリ。一方、同期の男性医師は、医局の関連病院に勤務しているため、給与は3倍ほどあるそうです。彼女の大学病院での仕事は、検査や手術の立会いと入院管理。専門医を取得するまで頑張りたいけれど、このままでいいのか不安だ、といっていました。
■「裏口入学させればずっと働く医局員を確保」
今回の東京医大での事件を知り、私は、医学部の入試の目的は、労働力を選別し囲い込むことだと考える様になりました。大学経営者にとっては、卒業後医師として自らが経営する大学病院や系列病院で働いてくれる人を選ぶ採用試験なのです。入試の合否の基準に卒後の働き方が入っていることが、その証左です。この点で、裏口入学は意味があったのでしょう。コネ入社と同じで、医師になるための「切符」をくれた大学には頭が上がらず、医局員として一生働かざるを得ないのですから。大学の経営者にしてみれば、裏口入学させてあげるだけで、謝礼を得るだけでなく、ずっと働いてくれる医局員を確実に確保することができます。お安いご用なのでしょう。