■ドラマ化できる原作が枯渇してきたことが要因

 虐待と誘拐という難しいテーマではあるが、これまでにも「誘拐者と誘拐された子供」をモチーフにした作品はあった。例えばドラマだと「Mother」(日本テレビ系、2010年放送)、映画なら『八日目の蝉』(2011年公開)などがある。誘拐という犯罪を違った視点から考えてみる契機にもなっているのではないだろうか。
 
 今回のドラマ放映中止と炎上について、映画ライターのよしひろまさみち氏はこう解説する。

「今のテレビドラマ業界はオリジナルのドラマ作品だとほとんど企画が通らず、お金がつかない状態なんです。映画もドラマもオリジナル作品は、本当に少なくなりました。結局、人気がある原作ものに手を出すのが当たり前になってしまっている。ただ、それもネタ詰まり状態になっている。漫画や小説の原作モノしか企画が通らない状態がここ10年続いていますが、2016年に放映された『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の大ヒットで、本当に“打ち止め”という状態。だから、このドラマみたいに、そもそも原作の時点で批判の声もあった作品でも、無理やり掘り起こしていかなきゃいけない」

 原作の奪い合いになっているテレビドラマ業界で、起こるべくして起こった騒動というわけか。とはいえ、なんとか無事に船出にこぎつけたのだから、1人でも多くの視聴者に原作者の思いと感動を届けてもらいたい。(ライター・今市新之助)