漫画「幸色のワンルーム」(c)朝日新聞社
漫画「幸色のワンルーム」(c)朝日新聞社

■虐待と誘拐がテーマのドラマが放送中止

 6月、あるドラマを巡って騒動が起こった。テレビ朝日系で放送予定だったドラマ「幸色のワンルーム」が放送中止になったのだ。両親から虐待を受けて育った少女が誘拐されるというストーリーで、「実際の事件と関係あるのでは?」という声が一部であがり、ネットで炎上した影響もあり、局側は放送中止という苦渋の決定をした。芸能ニュースだけでなく新聞もこの騒動を報じ、SNSでは原作ファンから批判の声が上がっていた。

「実際の事件と関係があるかのような批判が上がっていましたが、正直言って、その大部分は頓珍漢なものが多かった。SNSでコメントなどを見ましたが、要は原作ファンが『原作が好きだからドラマ化するな』みたいな話だった。一部のネットニュースの記事で『誘拐を肯定的に捉えている』という話もありましたが、内容的にもそんな話ではない。原作を読んでみたらすぐわかります。精査なしに報じてしまうメディア側にも違和感を覚えました」(ドラマ脚本家)

 一方で、制作を担当している関西の朝日放送は「実際の事件とは無関係であり、完全なオリジナル作品」と発表。加えて同社の山本晋也社長は会見で「このドラマは放送するべき」とした。一度は決定した放送を「総合的な判断」で取りやめたテレビ朝日について、朝日放送側も「(同番組は)番組販売であり、番組を購入するテレビ朝日の決定にコメントはない」としている。

 朝日放送は関西地区での放送を開始し、現在も放送中だ。またネットテレビ局「AbemaTV」や民放公式テレビポータル「Tver」など、ネットでも閲覧可能となっている。7月8日スタートの第1話は4%(関西地区、ビデオリサーチ調べ)で、深夜枠としては高視聴率だった。放送開始後、視聴者からのクレームについて、局側のアナウンスは特になく、ツイッターなどでも、おおむね好意的な投稿が多く、批判的な意見はあまり見られない様子だ。

「まず主演の山田杏奈(17)がかわいくて、演技が結構よく仕上がっています。原作から一層作り込まれた感じで、演出などに制作側の誠意も感じました。物語としてはサスペンス要素もあり、作品としての出来も悪くない。物語はこのまま、コンプライアンス的にNGな方向へいってしまうところが少し心配ですが、フィクションですし、ああいう見せ方なら大丈夫なんじゃないかなと思います」(前出の脚本家)

次のページ
ドラマ化できる原作が枯渇してきたことが要因