2点目はボール回しの流れからだったが、乾が大迫に入れたボールをDFのコンパニがヘッドでクリアすると、そのセカンドを香川が拾ってヴィッツェルのタックルをかわし、戻したボールを乾が右足のファーストコントロールからゴール右隅に決めた。守ってカウンターという形から得点を奪えるケースはもちろんあるが、やはり良い時間帯を作りながら、その中でカウンターやセカンドボールのチャンスをものにして行くかが鍵を握る。

 そのあとの試合の進め方には問題があった。2点取られるまでは相手のパワープレー気味の攻撃に対して引き過ぎたところがあり、同点に追いつかれた後は攻撃に意識が向いた隙をベルギーに突かれる形で、CKの裏側というテストマッチのスイス戦と同じパターンで失点してしまったのは大きな反省材料だ。

 しかし、この流れの中から奪った2得点を1つ指標として今後の攻撃のモデルケースとして行くことは4年後のさらなる躍進につながるのではないか。もちろん、このシーンでの形を模倣するのではなく、この時間帯に日本がどういうリズムで試合を進めていて、その中で相手のどういう現象を引き起こして生まれたゴールなのか。そうした教材になりうる2得点の時間帯だった。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才能”」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行予定。