

正捕手不在。現在のプロ野球界にとって大きな課題となっている出来事の一つではないだろうか。昨年行われたWBCでは小林誠司(巨人)がラッキーボーイとなったものの、その後の成績は芳しいものではなく、チームでも万全の地位を築いているとはいえない。再来年に開かれる東京五輪でも、現時点では有力な正捕手候補は不在という状況だ。また、アマチュア時代に強肩強打を売りにしていた選手が、プロ入り後に伸び悩むケースも多い。そこでプロで大成するキャッチャーの条件、難しさについて、自らも長年キャッチャーとしてプレーし、コーチ、スカウトの立場で多くの選手を見てきた元ヤクルトの八重樫幸雄氏に話を聞いた。
1970年にドラフト1位で仙台商から大型捕手として入団した八重樫氏。しかし入団当時はチーム事情もあって他のポジションを守ることが多く、キャッチャーとして一軍に定着したのは1977年のことだった。八重樫氏に限らず一軍戦力となるのに時間がかかるキャッチャーは少なくないが、そこにはどのような理由があるのだろうか。
「キャッチャーが一軍の戦力となるのに一番重要なのはキャッチングです。まずちゃんと受けられることです。アマチュアでは試合で球を受ける相手は数人ですが、プロではシーズンを通して何十人ものピッチャーの球を受けないといけない。それぞれの持ち球や特徴を把握するだけでも大変です。さらに、それをしっかりと受けられるようにならないといけません。昔に比べてブルペンキャッチャーの人数が多くなって、レギュラーのキャッチャーがベンチに入っているピッチャーの球を捕球する回数が減っていると思います。それはキャンプや練習だけでなくて、試合の時も同じですね。
ピッチャーは、その日によって調子が違いますから、試合前に実際に受けてみないと分からないのですが、結構、ブルペンキャッチャー任せにしている傾向があります。その点で言うと、古田(敦也・ヤクルト)は二軍から若いピッチャーが上がってきたときは、必ず練習でも受けていました。そうやって、ピッチャーの特徴を掴みながら、ちゃんとキャッチングするための下地を作っていました。あと若いキャッチャーを見ていてよく感じるのは、捕球の際のフットワークを教わっていないことが多い。