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扉の中にドロン…内川聖一が消えた「ログアウト事件」

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久保田龍雄dot.
ソフトバンク・内川聖一 (c)朝日新聞社

ソフトバンク・内川聖一 (c)朝日新聞社

 1回、レフトを守っていた内川は、先頭打者・西川遥輝の左翼前方にフラフラ上がったテキサス安打性の飛球をダイビングキャッチ。気迫あふれるスーパープレーにスタンドのファンは沸きに沸いたが、なんと、捕球の際に勢い余ってグラウンドに顔面を強打してしまった。

 首などを手で抑え、起き上がることができない姿を見たトレーナーや小川史ヘッドコーチらが心配そうに駆け寄ったが、数分後、何とか立ち上がり、プレーを続けた。

 その裏の第1打席では左中間二塁打を記録も、しだいにむち打ちの症状が現れ、「2打席目までは首が動いたけど、(その後)固まった」ことから、5回の守備から交代した。

 翌29日の楽天戦(koboスタジアム宮城)も「様子を見ている時期ではない」と3番DHで出場したものの、4打数無安打に終わり、30日はついに欠場、31日も代打で1打席のみと、首の状態が心配された。

 だが、チームが直近10試合で3勝7敗とあって、9月2日、「出なきゃいけない試合」と、1.5ゲーム差まで追い上げてきた2位・オリックスとの3連戦初戦に強行出場。6打数3安打を記録した。

 同4日も1点リードの6回に9試合ぶりとなる左越え15号ソロを放つなど3安打と大当たり。内川の故障を押しての奮闘で天王山の3連戦を2勝1分で乗り切ったチームは、3年ぶりのリーグ優勝、日本一を達成した。

 それから2年後、腰痛を押して出場していた2016年8月28日のロッテ戦(ヤフオクドーム)でも、8回に遊ゴロの送球を受けた際に一塁で打者走者のデスパイネと激突し、転倒。左腕打撲、左足首擦過傷、むち打ちと診断された。「8月28日」は要注意日である。

 一塁走者として10球連続スタートという珍プレーが見られたのが、2015年9月19日のロッテ戦(ヤフオクドーム)。

 0対0の4回裏1死、中前安打で出塁した内川は、次打者・李大浩がフルカウントになると、涌井秀章の投球と同時にスタートを切ったが、ファウルとなり、一塁に戻った。

 次も果敢にスタートを切ったが、またしてもファウル。そして、その次もスタート→ファウルと同じパターンが繰り返され、ついに9球連続ファウル。そのたびに息を切らして一塁に戻る羽目になった。

 こうなると、スタンドのファンも当然打席の李よりも内川が気になる。ファウルが7本続いたあたりから大拍手がわき起こるようになり、内川本人も「(拍手は)李大浩じゃないな。オレだな」と気づいた。

 そして、スタンドが注視するなか、内川は余力を振り絞って10回目のスタートを切ったが、李は一邪飛に倒れ、骨折り損のくたびれ儲けに……。

 だが、李が涌井に15球も投げさせたことは、けっして無駄にはならなかった。この回だけで41球も投じることになった涌井は、2死から長谷川勇也、今宮健太に連打を許し、ソフトバンクは貴重な1点を先制。2対0で勝利を収めたのだ。

 松田宣浩の三ゴロで二封され、先制のホームこそ踏むことはできなかったが、内川の10球連続スタートは、結果的にチームの勝利を呼んだと言えるだろう。

 試合後、内川は「ベンチに戻っても冷やかされましたよ」と苦笑しつつも、「フルカウントからずっとストライクを投げつづける涌井もスゴイし、ファウルを続ける李もスゴイ!」と両者にエールを贈っていた。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。


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