そして迎えた9回表、ロッテは1死から高沢秀昭、リーの連打で一、三塁とした後、4番・落合博満が左越えに自身の通算100号となる3ラン。これで試合は決まったかに見えた。

 ところが、その裏、まさかの結末が待っていた。中居は先頭の片岡新之介を一ゴロに打ち取るが、ファースト・落合が右手に当ててはじいてしまう(記録はエラー)。完封寸前だった中居のリズムは、ここから微妙に狂いだす。次打者・柴原実にも中前安打を許すと、1死後、弓岡敬二郎にフルカウントから四球を与え、満塁……。

 ここで迎えるは、3番・松永浩美。併殺狙いでフォークを連投し、ファウル2つでカウント1-2と追い込んだが、1球ファウルを挟んで2-2から投じた157球目のフォークが握力の低下から失投になる。

 フルスイングした松永の打球は、逆転サヨナラ満塁弾となって右翼席に消えていった。この瞬間、中居のプロ初完封も2勝目も幻と消えた。8回まで0対0で進み、9回表に3ラン、その裏に満塁本塁打という試合展開は、パ・リーグ史上初の出来事でもあった。

 中居は同年10月12日、因縁の阪急戦(川崎)で完投の2勝目を挙げてリベンジをはたすが、これがプロで最後の白星となった。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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