巨人時代から主にリリーフで活躍した鹿取義隆だが、西武時代の1995年には8回2/3のロングリリーフをやったり、ローテーションの谷間で先発するなど、タフネス右腕の本領を存分に発揮した。

 シーズン2度目の先発となった同年8月25日の日本ハム戦(東京ドーム)、鹿取は変化球主体の小気味良い投球で、8回まで5安打無失点。9回も先頭の田中幸雄に右前安打されたものの、小川淳司を二ゴロ併殺に打ち取り、プロ17年目の初完封まで「あと1人」となった。

 次打者はプロ14年目にしてレギュラーをつかんだ渡辺浩司。フルカウントで「あと1球」まで漕ぎつけたが、127球目のストレートを右越え本塁打され、初完封の夢はまさかの一発で無残にも砕け散った。この時点ではまだ12年ぶり2度目の完投勝利の望みを残していたが、山下和彦を振り逃げで出塁させた後、上田佳範に中前安打を許し、無念の途中降板……。

「もうバテバテ。限界だったね。最後(渡辺の本塁打)はカーブが曲がらなくなったんでね。あの1球はしょうがない。まあ、この歳(38歳)であそこまで投げられて、オレ自身は満足だよ」(鹿取)

 それから約1カ月後、鹿取は通算700試合登板となった9月21日のオリックス戦(西武)でも9回1死まで無失点に抑えたが、ここから連続長打を浴びて完封と白星がパーに。1カ月の間に2度も“大魚”を逃し、「途中まで良かったけど、結果が出なかった」と残念がった。

 最後は「あと1人」ではないが、プロ初完封まで「あと2人」という9回1死から悪夢の暗転劇に泣いた悲運の男を紹介する。

 男の名は中居謹蔵。福島・小高工からドラフト4位でロッテに入団した右腕で、プロ4年目の1983年に1軍初昇格。同年4月23日の日本ハム戦(宮城)で1失点完投し、プロ初勝利を挙げた。

 それから4カ月後の8月31日の阪急戦(西宮)、プロ2勝目をかけて先発した中居は連打を許さず、8回まで6安打無失点。だが、味方打線も山沖之彦の前にわずか1安打と沈黙し、0対0のまま最終回へ。

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157球目のフォークが…