ビートたけし (c)朝日新聞社
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志村けんが加入する前のザ・ドリフターズ (c)朝日新聞社
志村けんが加入する前のザ・ドリフターズ (c)朝日新聞社

『たけしが行く! わがままオヤジ旅3 古都金沢…爆笑珍道中』(テレビ東京系)は、ビートたけしが親友である島田洋七らと金沢を旅するロケ番組だった(4月14日放送)。

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 たけしの独立に絡んでたけし軍団と事務所社長の間の対立が騒がれていた中だったが、そんな緊張感漂う情勢とは裏腹の、のんびりしたムードの旅番組である。

 ただ、そこでお笑い好きには見逃せない一幕があった。ザ・ドリフターズ加藤茶がスペシャルゲストとして出演して、たけしとお笑い談義を繰り広げたのである。かつては『8時だョ! 全員集合』と『オレたちひょうきん族』という人気番組に出演するライバルとして激しい視聴率争いを繰り広げてきた2人が、貴重な共演を果たしたことになる。先輩である加藤がたけしのことを「たけしくん」と呼び、たけしが後輩らしく気を使っている姿が印象的だった。

 2人の会話の中で特に興味深かったのが、1974年に荒井注がドリフから脱退して、付き人だった志村けんが加入したときのエピソードである。荒井注の脱退はドリフのメンバーにとっても青天の霹靂だった。これまで通りのコントを続けていくためには、新しくメンバーを加えるしかない。

 当時、ドリフには新メンバーの最有力候補と噂されている人物がいた。ドリフの付き人を務めていたすわしんじ(現・すわ親治)である。すわは準メンバーのような形で『全員集合』にも何度も出演していた。ブルース・リーのモノマネで奇声を発して舞台を横切っていくギャグが評判だった。「6人目のドリフ」と言われるほどの活躍ぶりだったのだ。そんなすわに関して、たけしも番組内でこう述べていた。

「俺らは見てて、笑い取るのはあの当時ブルース・リーのが取ってたような気がするんだよね。だけど志村のけんちゃんは、どうして勝ったのかなっていうと、ネタが広いのかね」

 なぜすわではなく、志村が選ばれたのか。この素朴な疑問に対して、加藤は意外な答えを返した。実は、いかりやの当初の予定では志村でもなくすわでもない、別の人物を加入させる予定だったというのだ。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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