学術的に検証するためには、両親が離婚していない人の離婚率と両親が離婚した人の離婚率に統計的に有意な差があるのかを検証する必要がありますが、膨大な個人情報を扱う必要があるので現実にはなかなか実現困難な研究のような気がします。

 実証研究が困難そうなので、私の上述の仮説に基づいて推定するとすれば、両親が離婚していれば、スタートラインがいわばバツ1状態ですから、離婚に対するハードルが低い可能性はあります。ネットで調べてみると、根拠はかなり怪しいですが、バツ1の人の離婚率は50%程度だとのことです。そうすると、全体の離婚率が35%に対し、親が離婚している場合は50%です。

 この差を持って、「親が離婚していれば、子が離婚する」、とまでは言いにくい感じがしますが、どうでしょうか? 全体として若干の傾向はあるかもしれませんが、個人差の方が圧倒的に大きいように思います。

 そもそも、DVは犯罪であり悪ですが、離婚は辛いことがあったり、残念なことではありますが、悪ではありません。それを同列に語るのはいかがなものかとも思います。こういうことに気持ちを割くよりも、これから結婚する人も、離婚の危機にある人も、目の前の人とどうやってうまくやっていくか、に意識を向けられたらいいのにな、と思うのです。しかし、「うまくやって行く方法をみつける方法」がなかなか見つからないので、どうしてもこういう落とし穴に落ちてしまうことが少なくないようです。

 ちなみに、「うまくやって行く方法をみつける方法」ですが、一言でいえば、徹底調査です。

 私がまだサラリーマンで働いていたころ、同業他社から転職してきた同僚が、何かというと「前の会社では」と言って周りと軋轢を生んでいました。彼の主張は正論で、本人も有能な人ではありましたが、当然会社ごとにやり方が違うので、この会社にはこの会社の正論があるわけです。「こうしたら」という解決策を打ち出す前に、この会社の考え方の本質や癖をちゃんと理解して、一応はそれを認めるところから始めないと、打ち解けて行くのは難しいですよね。(文/西澤寿樹)

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西澤寿樹

西澤寿樹

西澤寿樹(にしざわ・としき)/1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)で多くのカップルから相談を受ける。経営者、医療関係者、アーティスト等のクライアントを多く抱える。 慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職

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