この点でも離婚も同じような効果をもたらすだろうと考えられます。親が離婚したことで離婚のプロセスを経験しているわけです。なので、離婚当事者としての観点では離婚に対するファンタジーがなく、バツ1の人のメンタリティーに近いものを最初から持っている、ということになります。

 違いがあるとすれば、子どもとしての体験があることです。

 登喜子さん(仮名)は、

「親が離婚して、母に引き取られたのですが、母が大変な思いをしているところをさんざん見てきたので、自分は絶対結婚するまい、と思っていたんです」

と言います。信夫さん(仮名)は、

「両親が離婚して、学校や友達の前で肩身の狭い思いをしたので、自分は結婚して子どもができたら絶対離婚しない、と心に決めてたんですが……」

といいました。

 お二人とも、自分の子どものときの体験から、離婚をしたくない、という気持ちも強くあるわけです。

 こういった気持ちは、離婚を強く押しとどめる力になります。実際に離婚を決意するに至るか否かは、離婚したい気持ちの強さと、こうした離婚を押しとどめる力のバランスによって決まるとも考えられます。

 ただ、もちろん離婚しなければいいというわけではなく、離婚したい状況や気持ちと、離婚したくない気持ちの葛藤が続くのはとても苦しいものです。

 離婚のハードルはどんどん下がっていて、現在、日本では、統計上、結婚するカップルの3組に1組は離婚すると言われています。(しかし、これは統計の解釈が少しおかしく今結婚したカップルの生涯の離婚可能性は1/3より高いはずです)

「彼も自分も両親が離婚したので、自分たちは離婚しないようにしようね、と話して結婚したのですが、結局自分も離婚になっちゃっうのかなと……」

というのは、夫から離婚を求められていた瑞穂さん(仮名)です。

 親のDVが子世代に連鎖するのか、についてはさまざまな観点から研究の蓄積があります。離婚にも同じことを言う人がかなりいるようです。ただ、こちらについては、みなさんが感触で言っていて、きちんとした研究の積み重ねがないように思えます。

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