パフォーマンスのみならず発言も大胆この上ない武田さん。しかし、全く嫌味に聞こえないし、本心で言っている。そもそも何故、ここまで言い切れるのか。これだけの偉業をなしてきた人物が、自身を何者でもないと宣するわけは、なんなのか。

「これまで築きあげてきたものは、自分からやってきたことではなく、周りが引っ張ってくれただけだから。一つのことをやると、それが次につながっただけ。なんかキーマンに引っ張ってもらえるんですよ、僕」

 実にシンプルにかつ愉快に人生を振り返る武田双雲さんに、話を聞いているだけで、こちらが幸せになる。その幸せを共有したい、自分ももっと自由に生きたいとの想いから、武田双雲という人間の前には沢山の人が集まってくる。しかし、そんな順風満帆な人生に見える武田さんにも、「ポジティブ」では無い日々もあった。

 本県出身の武田さんは、三人兄弟の長男として、生まれる。母親が書道家であったため、小さい頃から書道に触れていた。また両親は自分のことを常に尊敬の念で見てくれていたという。

「大丈夫よ、あんたなら。何をやっても、大丈夫だから、心配いらないよって、本当に怒られたという記憶はないんです」

 両親に愛されて育ったということもあり、昔から自由きままな生き方を歩んできたという。小学校、中学校に進んでもその生き方は変わらなかった。しかし、それが原因となってか友達がいなかった時期もあったと振り返る。

「僕、空気読むとか全くわからないんですよ。だから、友達も全くいなかったです。でも、そんなことあんまり気にしてなかったのかな。周りが自分のことどう見たっていいというか、それは自分がどうこうすることじゃないから」

 現在の武田双雲という人間からは、全く想像できない過去があったのだ。その後、社会人になるとNTTに入社し、安定した生活を掴んだ武田さん。しかし、毎日が憂鬱でしかなかったという。

「僕、人間関係とかも全くわからないんで、あの人とあの人が偉いとか、仲が悪いとか、あの人に気に入られれば出世するとか全くどうでも良くて、それで毎日が全然楽しくなかったんです。そんなタイミングで、会社の女子社員に自分の字を代筆してくれないかと頼まれて、書いてあげたら、その子が感動して涙流してくれて、それで次の日に会社に辞表を出したんですよ」

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退職を聞いた両親は…