島根県での合宿にて参加者とざっくばらんに話す
島根県での合宿にて参加者とざっくばらんに話す
参加者に自身の本とメッセージをプレゼントしてくれた
参加者に自身の本とメッセージをプレゼントしてくれた
正月のイベントにて
正月のイベントにて
全身を使ったパフォーマンスで「咲」という文字を書く
全身を使ったパフォーマンスで「咲」という文字を書く

 300人の生徒さんを抱える超多忙な書道家、武田双雲さんは、「字」を教えない先生である。

【全身を使ったパフォーマンスで「先」という文字を書く武田双雲】

「字に上手い下手はない、先ずは自分の字を好きになってください。教えるというより、その人の良さを引き出す。自分の個を書で表現することを目的にしているんです」

 そういう書道家である。現在、10代から70代までの生徒さんを7回のクラスに分けて教室を運営する。当初は10人程だったという生徒さんは、今では定員が一杯で入会待ちが出る騒ぎだ。書道を教える一方で、展覧会を開けば異例の4万人を集客。また、ザ・プレミアムモルツのCMでは作曲家、久石譲さんの曲と野村萬斎さんの声に合わせて、「夢」という字を揮毫する。さらに60冊近くの著書を世に出し、「人生ポジティブに生きる」「競争をやめたら夢がかなう」「常に自分を0の状態にしておく」など、数々の心に響くキーワードを世に発してきた。それに感銘を受けた人や生徒さんの前で、人生を楽しく生きる極意を伝えるために全国各地で講演会を開いたりと、これだけマルチに活動する人もなかなかいない。そして何と言ってもNHK大河ドラマの「天地人」の題字を担当したことで世にその存在を知らしめた。

「書道教室でやっていたリレー書道などの様々な楽しい書道企画をネット上で伝えたら、書籍出版の話が来て、その本がヒットして、その本を読んだ日テレ『世界一受けたい授業』のプロデューサーの方から声をかけて頂き、その番組の中でもリレー書道企画が高視聴率で、何度も出演させて頂きました。そんな中、大河ドラマの題字は、NHKのプロデューサーから直接お電話があり、僕の書をいろんなところで見かけたとのことで、『天地人』にぴったりだとオファーを頂きました」

 ここまで多岐に渡り、活躍する書道家がかつていただろうか。しかし、本人は意外なほどに自身を冷静に見据えており、予想外なことを口にする。

「正直、自分が何者かは、未だにわかっていない。書道家だとも思っていないし。そもそも、武田双雲という価値もわからない。自分をすごいなんて思ったこともない。なんなら、いますぐ書道を辞めたっていい」

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なぜ言い切れるのか?