春海さんは夫に、

「ちょっとぉ、お義母さんにもう送ってこないようにいってよ」といいますが、

「やらせておけよ。そうすれば気が済むんだから」

「じゃあ、送られてきた魚どうすんのよ」

「冷凍しておけばいいじゃん」

「冷凍したって、結局あなただって食べないじゃない!それに、誰も食べない魚を誰が手間暇かけて料理すると思っているのよ!」

「じゃあ、黙って捨てちゃえばいいじゃないか」

などと言い合いになってしまって、取り合ってくれません。

 夫は、やり取りは希薄だけど、自分が優位な(母親から嫌われるリスクが低い)関係だからこそ使える技「受け流し」を使えます。独身時代も母親との関係を受け流してしのいできたわけです。これでうまくいったから、妻もそうすればいいじゃないかというわけです。でも、関係性と関係の濃さが違うのです。

 妻は、やり取りは濃厚だけど、決して自分が有利とはいえない(義母から嫌われるリスクがある)関係だから、受け流すことなどできないのです。

 もっとこじれたケースもあります。

<例2 葵さん(仮名・女性)の場合>

 葵さんの義母は、夫婦の大小さまざまなことに介入してきます。「どこどこの通販で売っている野菜がおいしくて体にいいのよ、家族のことを考えたらそういうの買わないとね。」としつこく言い続けるなどというのは序の口で、家は一戸建てじゃないとだめだとか、子どもはどこの幼稚園に入れてどこの小学校がいいとか、決して命令口調ではないのですが、言う通りにするまで言い続けられるので、葵さんの感覚としては命令されているのと同じです。

 葵さんも最初は我慢していましたが、春海さんと同じく、夫にいろいろ言いましたが、夫は葵さんに対しても「受け流す」ので、次第に葵さんは義母と直接やりあうようになりました。それでも夫は両者の話を受け流し続けるのでどんどんエスカレートし、義母は「こんな嫁とは離婚しなさい」と夫に迫り、葵さんも「私と一緒にいたいならお義母さんと縁を切って!」と言うまでになってしまいました。

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マイホーム名義半分だけど義親のお金