──会社であるアガサ・クリスティー・リミテッドをお父様から引き継がれたそうですが、これから将来的にやってみたいことは?

「何を変えたいと聞かれるが、過去ずっと上手くいってきたから……。これまでビジネスが上手くいったのは、何を作ったかという判断より、何を作らなかったかという判断の良さにあったと思う。それだから現在があるのだと思う。画期的な変化は考えていない。過去最大のアガサ・クリスティー作品といえばポアロとミス・マープルシリーズだが、長期的に続き完結したと思う。だから現在やっていることは、それとは異なりモダンではあるが、意図的に大々的な変化しているわけではない。何本か長編映画をやってみようかという風に考えているだけなんだ。プロジェクトごとに1本1本最善を尽くして取り組もうと感じているんだ」

──作品の映像化に関して、承諾するときの基準はありますか。何を大切にしていますか。

「ルールブックはないんだ。直感なんだ。僕らの手掛ける仕事はすべてが、“アガサ・クリスティー体験”となるようなものにしたいと感じている。それを何となく自分で理解していると思う。テレビ・ドラマや映画は脚色だから、媒体によっての変化があるのは当然だ。それは理解できる。とはいえあまりにも劇的な変化はありえないだろう。もしここでルールを僕が決めたとしても、明日にはそれを破るというのも目に見えていることだよ。だからルールは作らない。直感を大切にしているんだ」(高野裕子)