──ここにはよいいらっしゃるのですか?

「今日は久しぶりだが、曽祖母が生きていたころ、子供の頃かなり良く来ていたんだ」

──さて新作映画『オリエント急行殺人事件』が公開になりますが、ご覧になりましたか?

「見たよ。素晴らしい出来だよ。1か月ほど前に電話がかかってきて、小さなソーホーにある試写室で観た。僕とブラナーと他の二人の4人だけで完成作を見たんだ。ちょっと緊張したんだ。もし映画が気に入らなかったらなんとブラナーに言いわけすればいいのか、わからなかったから。だがそんな心配は無用で、映画をとても気に入ったんだ」

──脚本は原作にどれほど忠実ですか?

「非常に忠実である、と言えるだろうな。物語の筋書きはすべて映画に含まれている。オープニング・シーンは新たに加えられた。シーンの設定もポアロの描写もとても見事だ。実のところポアロを描くというのは簡単なことではないんだ。風刺画的になったり、人好きのしない感じになったりしかねない。気難しくて、インテリジェントで、ナルシストで、それが絶妙にまじりあった、それでいてユーモアも混じった味のあるポアロ像が今回の映画のポアロにはあって、天才的なひらめきを感じるよ」

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別荘で過ごした曽祖母アガサさんの思い出は?