──もし祖祖母が生きていたら、どれか作品の内容に関して質問してみたい事ってありますか?

「そういったことは考えたことがないな。胸をよぎることがあるとしたら、父が曽祖母と一緒の時を過ごしたということにちょっぴり嫉妬を感じるんだ。父は曽祖母と日常生活の中で、普通に会話を交わす機会がとても多かったから。父の話しに祖祖母は真剣に耳を傾けてくれたというから。最高の聞き手だったとね。居間の大きなソファーに座って、子供ながら彼女と会話を交わすのはきっと楽しかったと思うよ」

──アガサ・クリスティーの作品の中で、あなたの一番お気に入りのキャラクターは?

「退屈な答えかもしれないけれど、ポアロかな。あとミス・マープルはあまり好きではなかったんだが、最近読み直してみてこのキャラクターに対する敬意というか愛情を感じるようになった。彼女は僕が以前思っていたよりも、ふわっとしたキャラクターではなくて意見が変わったんだ」

──アガサ・クリスティーの仕事哲学から学んだことはありますか?

「彼女にとって執筆とは子供を産むようなことだったんだと思う。メモをとったノートが残されているが、それを見るととても簡単、大雑把なメモで、ほとんどのプロットは頭の中に入っていたんだと思う。準備ができた段階で、一気に書き上げたようだ。歳をとって書くことが困難になったときには、口述で執筆したものだが、そのテープを聞くとまるで本を読んでいるように聞こえるんだ。頭の中で執筆しているんだ。その口述は、書きあがった本とほぼ同じなんだ。口述したとき、沈黙したり考えたりする時間はほとんどなかった。止まることなく、頭の中で完成した小説をすらすらと口述したんだ。そんな驚くべき頭脳をもっていたんだ。また1本執筆しているときに、頭のどこか他の部分には他の作品がはいっていたワケだし……。だからまるで完成した小説のように口述できた。まったくの驚きだよ。天才的な才能だと思う」

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