前ソフトバンクの松坂 (c)朝日新聞社
前ソフトバンクの松坂 (c)朝日新聞社

 毎年恒例だった日本人メジャーリーガーのNPB復帰報道だが、今オフに関しては聞こえてこない。可能性としては、マーリンズの退団が決まってフリーエージェント(FA)となったイチローの名前が挙がるが、「メジャーで50歳現役」を目指しているレジェンドが見据える先は、島国ではなく、北アメリカ大陸にあるだろう。だが、これまでを振り返ると、多くの日本人選手が「元メジャーリーガー」の肩書を手に日本球界に戻ってきた。その数40人余り。では、果たして彼らにどれほどの価値があったのだろうか。

 成功例として第一に名前が挙がるのが、井口資仁である。メジャーで世界一を経験した後に34歳で日本球界復帰を果たすと、持ち前の勝負強い打撃を存分に披露。2010年には打率.294、17本塁打、103打点をマークし、ロッテの史上最大の下克上に貢献した。その後も主力として働き、42歳で迎えた今シーズン限りで現役を引退。来季は監督としてチームを率いる。印象度では新庄剛志の方が上だろうか。メジャーでの3年間を経て北海道に移転元年の日本ハムに加入すると、1年目から自己最高の成績を残してゴールデングラブ賞も受賞。2004年のオールスターでは本盗成功でMVPをかっさらい、2006年の日本一にも貢献した。もちろん黒田博樹も忘れてはならない。古巣・広島への“男気復帰”から2年連続で2ケタ勝利をマーク。若手投手陣の手本となり、25年ぶりのリーグ優勝の立役者となった。

 グラウンド内外に大きな影響を与えた上記3人以外にも、投手陣では和田毅や五十嵐亮太、石井一久、斎藤隆、岡島秀樹、薮田安彦、木田優夫、吉井理人、川上憲伸、藤川球児、井川慶、高橋尚成、伊良部秀輝、佐々木主浩、松坂大輔など。野手陣では、松井稼頭央、城島健司、田口壮、岩村明憲、中村紀洋、田中賢介、西岡剛、福留孝介、中島裕之など、多くの実力者たちがメジャー挑戦から帰還し、日本での再出発を図った。そして和田毅や五十嵐亮太、斎藤隆、松井稼頭央のようにリーグ優勝に貢献した者もいるが、その他の多くの選手が2度目のNPBで大いに苦しんだことも事実。膨らんだ期待が大きい分、それに応えられなかった場合の反動も大きく、年齢的な衰えと、それに付随する以前のイメージとのギャップ、さらに高年俸に対する費用対効果の面でもファンからのバッシングの的になった。球団に求められるのは、冷静な判断と本人との対話。働き場所を明確にした上で必要戦力として適正な金額で迎え入れること。そしてファンには過度の“海外コンプレックス”からの脱却が求められる。

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