そんな彼女が初めて「自分はひとりじゃない」と思えたのが「妊娠」なのだとしたら、これまでの辛さが胸に迫ってきます。

 自分だけではどうしようもない状況に陥ってしまった時に信頼できる頼り先がない、そのことを「孤立」というのであれば、「孤立」は、家族がいても、学校に通っていても、会社で働いていても、誰にでもあり得ることだと思います。

――活動を続けてきて印象的だったケースはありますか?

中島:私たちが出会う子の中には、「家族みんなとても仲がいいんです」という子もいます。でも、だからこそ言えない、と。知ったら親が悲しむ、ダメな子だと思われる(いい子だと思われていたい)、これ以上迷惑をかけたくないと言います。

 進学校に通い、親の期待を一身に背負い、小学生の頃からずっと努力し続けてきている子です。大人の決めたルールや枠の中で成果を出すと褒められる、承認される。良い結果を出さなければ生きる価値がない、そんな風に思っている子にも出会います。

 そんな子はうまくいかなかったことは全て自分のせいだと自分を責めていたりします。

――彼女たちを継続的に支援するのが「にんしんSOS東京」。これまでは、こういった相談窓口はなかったのでしょうか?

中島:東京都にはこれまでも「妊娠相談ほっとライン」があり、妊娠育児支援に関する情報の提供を行っていました。ただしこちらは単回の相談が基本です。「にんしんSOS東京」は、継続的に相談を受け、相談者を医療機関や行政などの支援につなぐことが目的です。

 情報だけならインターネット上にいくらでもあります。私たちが担っているのは、次の4つです。

役割的機能:その子自身の環境や生態系になる:大きな家族だったり親戚だったりコミュニティの代わりになる
情緒的機能:愛着アタッチメントやレジリエンスを助ける
評価的機能:エンパワメントする自己肯定感が高まる
情報的機能:医療・福祉・司法の専門家がいて正しい情報が得られる・道具やスキルが手に入れられる

 この4つを継続的に、時には顔の見える関係になりながら、相手の力を奪わずに担う存在でありたいです。そのために、私たち自身も試行錯誤、相談者さんに問いかけながら、私たち自身が学びながらの毎日です。

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