「公園の花壇でへその緒がついたままの新生児が見つかった」、そんなニュースが1年に何度か流れる。妊娠は一人では成立しない。必ず始まりは二人から、だ。

 しかし、ニュースで流れるのは母である女性の顔写真や個人情報であり、そこにどんな背景があるのかまで掘り下げられた報道は多くはない。もちろん、父である男性に関する情報を耳にすることはほとんどない。

 そして、「自己責任」「自業自得」…… ニュースに対するコメント欄はそんな言葉で溢れている。

 人に言えない妊娠、思いがけない妊娠をした女性が、大きな不安とお腹に赤ちゃんを抱えたまま、たった一人きりで出産の日を迎える、その前に、誰かとつながることができたら――。そんな思いから活動を始めたのが「にんしんSOS東京」だ。2015年12月に相談支援窓口を開設し、看護師、保健師、助産師、医師や社会福祉士らが届いたSOSを受け止めている。若い女性だけでなく、様々な年代、そして男性からの相談を、電話やメールで受け、実際に会いに行くこともある。

 活動開始からのこれまでに受け付けた相談者の数は800人を超えた。この活動の記録をまとめた『漂流女子 にんしんSOS東京の相談現場から』(朝日新書)の著者で、同団体代表理事の中島かおりさんに、今の思いを聞いた。

■なぜ彼女たちは孤立しているのか

――帯にある、「妊娠したら、ひとりで死ななくていいと思った」のキャッチコピーを見て悲しくなりました。

中島:この言葉を言ったのは16歳の少女です。まだ未成年、子どもですよね。そしてその相手は大人です。彼女が妊娠したことを告げると、相手が子どもだとわかっているにも関わらず、逃げて責任を果たそうとしない、彼女の身体を気遣うことすらできないのが相手の大人なんですよね。

 彼女には両親や兄弟がいて、友達もいて、物理的にはひとりぼっちではありません。けれど家族は崩壊寸前。

 まだ子どもの彼女ではどうすることもできない環境で、それでも自分の役割を必死に果たしながら、「漂流」している過程の中で、TwitterやSNSアプリで、優しい言葉で近づいてくる大人たちと出会っています。

次のページ