不妊治療によってセックスが義務としか感じられなくなり、興ざめになっていく男性たち……。セックスレスを解消するためにできることは? (※写真はイメージ)
不妊治療によってセックスが義務としか感じられなくなり、興ざめになっていく男性たち……。セックスレスを解消するためにできることは? (※写真はイメージ)

 東京・渋谷にカウンセリングルームを構え、数多くのカップルのカウンセリングを担ってきた臨床心理士の西澤寿樹さんが、男女の問題をわかりやすく読み解くコラム。今回は「不妊治療がもたらすセックスレス」について、解説します。

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 不妊治療(体外受精)で生まれてくる赤ちゃんは、いまや出生児全体の約5%に上ります。40人のクラスなら2人ということです。体外受精以前の不妊治療で妊娠・出産する人もいますから、多少なりとも不妊治療をした割合はもっと高くなります。今や特別な感がない不妊治療ですが、働きながら不妊治療をした女性の2割が退職し、転職をした女性は1割に上るそうです(NPO法人Fineによる調査)。そうした先行きを読んで不妊治療に入る前に退職してしまう人などもいますので、実態としてはもうすこし高いと思われます。子どもを持つためにどれだけの犠牲を払わなければならないのか、心が痛む調査結果です。しかし画期的な解決策がすぐに見つかるとは思えないので、残念ながら短期的にはあまり現状は変わらないのではないでしょうか。

 妊娠出産もそうですが、不妊治療は男女不平等な現実がてんこ盛りです。男性不妊というのもありますが、多くのケースでは女性が痛い検査をしなければならず、その後も、注射を打たれたり、手術をされるのもほとんどが女性です。体外受精の卵が着床しなかったとか、着床しても流産してしまうとか、直接的につらい現実に直面するのも女性です。男性の場合、精子検査がOKなら、その後は物理的な負担はかなり少なくなります。

 肉体的な苦痛はもちろんのことですが、精神的な困難はより大きくのしかかります。それは、夫婦間よりも、夫婦外の関係のものの方がより厄介な問題になります。

 さやかさん(仮名)は「妊娠できない引け目というのは大きなストレスですが、それは夫に対してよりも、義母に対する引け目の方が苦しい」といいます。

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西澤寿樹

西澤寿樹

西澤寿樹(にしざわ・としき)/1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)で多くのカップルから相談を受ける。経営者、医療関係者、アーティスト等のクライアントを多く抱える。 慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職

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