■東京都の小手先の対策は焼け石に水

 これほどまでに深刻な問題に対する東京都の対策ははっきり言って焼け石に水だ。

 仮設館を造ると言っているが、その面積はたったの2.3万平方メートルで、ビッグサイトの4分の1弱。しかも、ビッグサイトからは徒歩15分以上かかるとされる。夏冬の寒暖の厳しい時期や雨天の際などは極めて不便だし、一体感のあるイベントにはならない。見本市は一つ屋根の下に何千社も集まるというところに意味があるということを理解しないからこんなピント外れの対応策が出てくるのだ。

 また、閉鎖期間を若干だけ短縮するとも言っているが、ほとんど解決策にはならない。このままでは、コミケ一つ取っても2020年夏だけでなく、2019年の夏冬2回の開催規模の大幅縮小は避けられない。これがはっきりすれば、世界中のコミケファンから大ブーイングが起きるだろう。

 こうした事態の影響で、ただでさえ限界がある日本から、多くの見本市や出展企業が海外などの見本市に流れることになるだろう。一度外に出たら取り戻すのは困難。見本市の開催は、一朝一夕にできるものではない。血のにじむような努力をして何十年もかけて出展社数を増やし、海外にPRしてバイヤーを呼び、やっと世界に並ぶ規模の見本市に育てたと思ったら、ここで、いったんとん挫ということになる見本市が続出する。ようやく世界を追いかける段階に入った日本の見本市産業は、逆に一気に縮小を余儀なくされるわけだ。

 一方、中国はもちろん、韓国やシンガポールなどの見本市会場は大喜びだろう。

 北京(08年)、ロンドン(12年)の両五輪では国際的な見本市が中止になるケースは皆無だった。イギリス政府、中国政府も見本市の戦略的重要性をよくわかっており、巨大展示場を五輪関連施設として使用するような愚を犯すことはなかった。

 これは完全に政府と東京都の政策ミスである。見本市産業を振興すると大きな声で宣伝している経産省もやはり素人だったということが露呈した。安倍首相は今回の衆院解散を「国難突破解散」だと名付けたが、東京ビッグサイト問題こそ“国難”ある。

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