■中小企業に大打撃

 2020年のオリパラ期間中、ビッグサイトはメディアセンターとして利用されることになっている。そのため、96,660平方メートルの展示場が最長20カ月間、使用不可となる。

 東京都はその対応策としてビッグサイトから約1.5キロも離れた場所に仮設館(23、200平方メートル)を建設する予定だが、それを含めても、全面使用不可の期間が5カ月近くあり、20ヵ月間の平均利用可能面積も現状の54%しかない。

 その煽りを受け、同期間に開催が予定されていた232本もの見本市が中止に追い込まれる。このため、何と7万8千社(うち95%が中小企業)が2兆円の売り上げを失う(日本展示会協会の試算)ことになるというと、多くの人は驚くだろう。それは、見本市と言うと、年に1回の業界団体の発表会で一種のお祭り兼PRの場だというくらいにしか考えていないからだ。

 しかし、見本市は、「商談の場」として、一般の想像をはるかに超える重要な機能を果たしている。

 見本市では食品、機械製品、オモチャ、エネルギー関連サービスなど、ありとあらゆるジャンルの商品・サービスが展示され、国内外のバイヤーが押しかける。その来場者数は、ビッグサイトだけでも年間1500万人近くにもなる。それだけに、広告費や海外出張費を捻出できない国内の中小企業にとっては、見本市はまたとない自社製品売り込みの場であり、買い付けの場でもある。

 見本市は、毎年決まったスケジュールで同じ場所で開かれることに意味があり、企業は、それを目標にして商品開発を進め、見本市で1年の大半の契約の成立につなげる。もし、見本市の場を失えば、個々の中小企業は、新たな顧客を開拓するために自ら世界中の潜在的な顧客に売り込みに行かなければならないが、そんなことができる企業はごく少数だ。また、バイヤーにとっても、日本中の生産者を個別に発掘しなければならなくなる。したがって、見本市の中止は、中小企業にとって、売り上げ・買い付けの大幅減少を意味する。だからこそ、前述したように中小企業などから悲鳴が上がり、大規模なデモまで実施されたのだ。

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