「小説は全く読まない」「小説に興味がない」という方、あえて小説を手に取ってみましょう。長編は感情を追うことが苦手な人には苦痛ですから、まずは短編小説からスタートするのがおすすめです。

 読み方にもコツがあります。一つは小説中の誰かになりきって読むことです。主人公でもいいですし、ライバルでもいいでしょう。ヒロインでもいいかもしれません。誰かになりきって読むことで、感情移入がしやすくなります。

 そして、登場人物の表情を想像しながら読むようにします。もし、それが難しい場合には、映画化やドラマ化された作品を先に見てしまうのも手です。そうすれば、小説の中の登場人物が、映画やドラマの俳優の映像でイメージされるようになりますから、表情が想像しやすくなり、感情を想像することも容易になります。

●小説が苦手なら、名言集でも

 小説がどうしても苦手という方には、名言集もおすすめです。名言には、作者の人生観が凝縮されています。それを味わうことで作者の人となりや人生、感情に思いをはせることになるからです。ビジネスパーソンであれば、経営者の名言集でもいいでしょう。合わせて伝記なども読むといいですね。もしその人物の記念館や文学館がある場合には、現地に足を運ぶと、より深くその人物を知ることができますから、自分の感情に多くの刺激を与えることができます。

 ある特定の人物の人となりや人生を深く知ることで、自分の中にある人と関わる感情の部分を鍛えていくのです。

 管理職にコミュ障が多いように思えるのは、実際にはその立場に立つことで、求められるコミュニケーションの能力が増えるからです。そしてそれに対応できるだけの能力を備えていない、人の感情の流れを理解することが苦手な人が多いからなのです。最近小説を読んでいない、という上司の皆さんは、ちょっと書店に寄って、小説を一冊手に取ってみましょう。コミュニケーションのハウツー本よりも、得られるものが多いはずです。(構成/黒坂真由子)