「正直、今はあまり、いろいろ考えられないです……。チームとして出ているので、自分の経験になろうがなるまいが、しっかり一試合一試合大切にしていきたいと思ってました。今日はあまり収穫もなく、もう(日本に)帰るしかないのが、本当に残念です……」

 表情は幼さが残る、10代の少年そのものだが、ピッチ上では年齢を感じさせないプレーと態度を見せる。そこには「年齢でモノを語ってほしくない」という強烈な自己主張を感じる。周りは『飛び級』だ、『最年少』だと騒ぎ立てるが、彼の中にはそういう意識は微塵もなく、対等かつ責任がある立場と受け止めている。

 だからこそ、ベネズエラ戦の後、彼は大きく肩を落とし、まるで敗戦の責任を一人で背負い込んでいるかのようなコメントを残した。

「この大会に呼んでくれて、本当に内山篤監督には感謝の言葉しかないです。本当に楽しかったし、あっという間だった。もっとこういう世界の舞台を経験したいと思った」

『世界』に対する欲求が増した。だからこそ、彼は辞退しても何ら問題もなかったU-17ワールドカップに出場を志願し、メンバーとして開催地であるインドに飛び立った。

「彼は純粋に向上心を持ってサッカーに取り組んでいる。どんな試合でも使わないと試合中から『俺を出せ、俺を出せ』という雰囲気を出すし、出したら喜んでピッチに出ていって、チームのためにハードワークも率先してやってくれる。そういう子ですよ」

 彼が所属するFC東京U-18の佐藤一樹監督がこう語るように、久保の頭の中に打算的な考えはない。どんなときも、どんな試合でも出たいし、出たら全力を尽くす。純粋なサッカー小僧であり、その根底にはもっとうまくなりたい、もっとチームに貢献したいという欲望がある。

 U-17ワールドカップでは、そんな彼の純粋かつ貪欲なプレーを見てほしい。今回、ほぼ周りは同年代。飛び級や最年少という、彼にとっては『くだらない枕詞』が付くことはない。チームの主力として躍動する彼の存在がそこにある。(文・安藤隆人)