最も警戒するべきは司令塔のオスカルだ。グループステージでは浦和ホームの試合でPKに失敗し、森脇良太の挑発行為に冷静さを失う場面も見られたが、今では上海上港のサッカーにすっかりフィットして、4月当時よりワールドクラスの創造力を発揮している様子だ。

 そのオスカルを起点に大会8得点のフッキ、準々決勝の第1戦で2得点を記録した武磊、そしてエウケソンが自由度の高いポジショニングからゴールを狙ってくる。さらに、その4人を支えるボランチのアフメドフには目の覚めるような長距離砲がある。9月27日に上海で行われる第1戦は基本的に上海がボールを持ち、浦和はいつもより守備を固めてカウンターを狙う度合いが強くなるだろう。

 そこで堀監督がここまで守備面に課題を見せる4バックで挑むのか、それとも慣れた3バックで戦うのかどうかもポイントになる。オスカルの自由を少しでも奪うにはキャプテン・阿部勇樹の中盤起用が有効であることは確かだろう。あるいは、青木拓矢をオスカルにマンマーク気味に付けるという手もある。いずれにしても、中盤の守備は生命線となるだろう。

 浦和が3バック、4バックのいずれを採用しても、フッキと多くの局面でマッチアップするのは槙野智章になるはず。味方が中盤でオスカルを封じても、フッキがワイドの位置でボールを持てば、強引なドリブルで突破を狙ってくる。そこから個人の力で崩されてしまうと最終ラインが決壊してしまうため、槙野の役割はいつも以上に重要だ。攻撃面は、興梠慎三ら日本人FWも期待できるが、前回の2試合でPKを含む2得点を記録しているラファエル・シルバのスピードは、上海上港の守備陣にとって脅威になるだろう。有効に使っていかない手はない。

 ただし、接戦となれば最終的には総合力が勝敗を分けることになる。川崎戦の第2戦では高木俊幸が意外性のあるシュートで決勝ゴールを挙げた。こうした“ラッキーボーイ”の活躍が、浦和を決勝の舞台に引き上げるかもしれない。準決勝の第1戦までにJ1のジュビロ磐田戦とサガン鳥栖戦、天皇杯の鹿島アントラーズ戦を挟むが、J1での優勝が現実的に難しい状況で、ACLにコンディションを合わせていけるかどうかもカギを握る要素だ。

 浦和が決勝に進めば、優勝した2007年以来10年ぶりとなる。決勝では別のやぐらで行われている西地区のチームと初対戦になるため、未知数な部分が大きい。ただ、決勝では東地区が5連勝中で、カタールのアル・サッドが全北現代(韓国)を破った2011年もPK戦で決着している。

 西地区準決勝はイランのペルセポリスとサウジアラビアのアル・ヒラルの対戦となり、どちらが勝ち進んできても、決勝は厳しい環境の試合になることは間違いない。浦和としてはまず、アジア最強レベルの相手を準決勝で叩き、その勢いに乗じてアジアの頂点まで駆け上がることを期待したい。(文・河治良幸)