(3)「逆さ十字」は悪魔崇拝のシンボルではない

 十字架を上下逆さまにした「逆十字」は、よく悪魔崇拝や反キリストのシンボルとされている。しかし、それは北欧ではじまったヘヴィメタルのサブジャンル・ブラックメタルのバンドが、反キリスト教のトレードマークとして使ったことから広まったイメージで、本来、逆十字にそのような意味はない。
 
これは「聖ペテロ十字」とも言われる十字架で、聖ペテロが磔にされた際に、「イエスト同じ十字架では恐れ多い」ということで用いられたことにちなんだものだ。

(4)「大罪」は七つとはかぎらない

 キリスト教用語の「七つの大罪」という言葉も、映画やマンガ、アニメなどで引き合いに出される言葉だ。その七つとは、「高慢」「強欲」「色欲」「嫉妬」「暴食」「憤怒」「怠惰」で、これらは地獄行きの罪だ。
 
ただし、「何が大罪なのか?」については、「七つの大罪」とは別の枠組みで、カトリック教会がより具体的な指針を示している。その中身は、神への不敬、殺人、強姦、偽証、詐欺などだが、時代が進むにつれ、治療目的以外の麻薬の使用やポルノ産業への従事など、新しい大罪も増え続けているのが現状。つまり、大罪は七つだけではないのだ。

(5)「シヴァ神」は残酷な破壊の神ではない

『ファイナル・ファンタジー』シリーズでも常連キャラクターとなっているシヴァ神は、ヴィシュヌ神とならぶヒンズー教の最高神だ。よく残酷な破壊の神であるかのように理解されているが、そうした理解は浅すぎる。

 シヴァ神は、ヒンズー教の説話では世界創造の過程で生まれた「世界を滅ぼす毒」をすすんで呑み込んだという慈悲深い神で、世界を破壊するのも新しい世界を創るためなのだ。また、シヴァ神を主に信仰する教派のヒンズー教徒にとっては、シヴァ神は破壊の神どころか生殖と豊饒の神だと考えられていることも知っておいた方がいいだろう。

 大方のゲーム・アニメ・映画などで使われる宗教用語は、あくまで作品の雰囲気作りのために登場するもの。それはそれで悪いことではないが、見る側がそうした作品を見ただけで、その宗教用語を分かった気になるのは危険。

 むしろ、それをきっかけに、その宗教用語の正しい意味を調べてみることで、より作品世界の理解も深まるのではないだろうか。