世界屈指の資金力を持つレアルは、ジダンだけでなく世界のトッププレーヤーを買い集め、「銀河系軍団」とも称されてきた。その伝統は21世紀でも絶えることなく続いており、現所属選手ではポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドとウェールズ代表FWギャレス・ベイルを、それぞれ元の所属先であるマンチェスター・Uとトッテナム(イングランド)から、付帯条件で違いはあるようだが、いずれも約1億ユーロ(約130億円)という移籍金で獲得している。彼らはここ2シーズン連続でUEFAチャンピオンズリーグを制したチームの看板攻撃トリオ「BBC」のうち2人であり、高額移籍金に見合った活躍をしている選手だといえる。

 しかしながら、あくまでも投資という観点も鑑みれば、当然、失敗例もある。例えば、レアルはACミラン(イタリア)からブラジル代表MFカカを獲得した。移籍金は7000万ユーロ(約91億円)とされたが、ミラン時代にバロンドールを獲得したキレは見られず、負傷での長期離脱もあり、4シーズン後にレアルを離れた。その去り際は、メディアのアンケートでレアルのサポーターたちの大半がカカの放出を支持するという結果が出たほどの寂しい状況だった。

 また、同様に大型補強の目立つマンチェスター・Uは14年夏にレアルからアルゼンチン代表MFアンヘル・ディ・マリアを5970万ポンド(約101億円)で獲得したが、チームにフィットできなかったディ・マリアはわずか1年で退団。PSGに6300万ユーロ(約86億円)で移籍している。もちろん、1年分の働きはあるにしても、マンチェスター・Uは約25億円の損を出した格好だ。こうした、加入時の移籍金と退団時の移籍金は常に比較されるし、高額の投資に対して“失敗”の烙印を押された選手には、ファンからも激しい風当たりがある。

 残り約1カ月となった移籍市場では、18歳にしてフランス代表に選ばれたモナコのFWキリアン・ムバッペが高額移籍の候補に挙がっている。モナコを説得するには少なくとも1億ユーロ(約130億円)が必要だと見込まれている。ネイマールほどのインパクトは無いかもしれないが、その動向にも注目が集まっている。

※移籍金は推測、レートはおおよそ当時のもの