90年代に入ると、石川・星稜に「ゴジラ」松井秀喜が出現した。ラッキーゾーンが撤去された甲子園で、3年春に2打席連続本塁打を記録して注目を浴びた松井は、3年夏の高知・明徳義塾戦で5打席連続敬遠され、社会問題にもなった。98年に春夏連覇を果たした神奈川・横浜の松坂大輔は「平成の怪物」と呼ばれた。最後の夏には史上2人目となる決勝戦ノーヒットノーランという快挙を達成した松坂の横浜は、2年秋の神奈川県ブロック予選から翌年の国体まで公式戦44連勝を記録した。

 2000年代には宮城・東北のダルビッシュ有、北海道・駒大苫小牧の田中将大という現在ではMLBを代表する投手が甲子園を沸かせた。2年夏から4期連続で甲子園に出場し、3年春にはノーヒットノーランも記録したダルビッシュは、2年夏に決勝進出を果たしたが、茨城・常総学院に敗れ、長らく「白河の関を超えない」と言われた東北勢悲願の全国制覇を目前で逃した。その東北を飛び越え、北海道で初の全国制覇を果たした駒大苫小牧で夏3連覇を目指した田中は、「ハンカチ王子」斎藤佑樹の早稲田実と決勝戦再試合の名勝負の末、準優勝に終わった。

 今大会で2度目の春夏制覇を目指す大阪桐蔭だが、1度目の達成時にエースとして活躍したのが藤浪晋太郎だ。藤浪は3年春の甲子園で史上初めて全5試合で150キロ超を計測し、夏は20年ぶりとなる準決勝、決勝で連続完封を記録して、チームを史上7校目となる春夏連覇に導いた。

 記録で言えば、徳島・徳島商の板東英二(1大会通算奪三振)、神奈川・桐光学園の松井裕樹(個人1試合最多奪三振)、大阪・浪商の香川伸行(連続試合本塁打)、愛知・享栄の藤王康晴(連続打席出塁)なども印象に残る。甲子園でアマチュア野球史上初となる160キロを計測した岩手・花巻東の大谷翔平も、もちろん忘れるわけにはいかない。

 彼らに限らず、それぞれの時代に、またそれぞれの地域に「怪物」と呼ばれる選手は多数存在し、それぞれの高校野球ファンの心に残っているはずだ。今年の大会でも新たに「怪物」と呼ばれる選手は登場するのか。清宮というスーパースターが出場しなくとも、他の誰かが現れる。それが甲子園という舞台だ。今年の大会でも新たな「怪物」の登場を楽しみに期待したい。