■診断を受けたあと、どうサポートしたらよい?

 診断を受けたら、その日は実家にいっしょに帰ってしばらく見守ることが大切だと杉山医師は言います。

「認知症と診断されるのは、家族にとっても非常に大きなショックですが、やはり本人がいちばんショックを受けているのだということを忘れないでください」

 認知症の初期であれば、本人は診断結果の意味を十分理解できるはずです。

「これから自分はどうなってしまうのか、何もわからなくなってしまうのではないかという不安に襲われます。その恐怖は筆舌に尽くしがたいものでしょう」(杉山医師)

 本人の思いをくみとって、サポートできるのは家族だけです。でも実際には、本人の思いを理解するのはけっしてラクなことではないと杉山医師は強調します。

「たとえば目が見えなくなる、足を失うという身体的喪失の恐怖は、想像しやすいのです。でも、認知症の恐怖は簡単には理解できません。だからこそ、認知症について学び、正しい知識を得て、その気持ちを想像することが必要なのです」(同)

 認知症になっても終わりではない。できることもたくさんある。家族がそれを信じることが、サポートの第一歩だと杉山医師は言います。

「最初からそれができる人はいません。私がおすすめしているのは、認知症の『家族の会』に参加してみることです。経験者の話を聞いてみることで、自分にできることがわかってくると思います」

■遠方に住む親の認知症に気づいたらどうする?

「親の住む地域の福祉サービスを、遠慮なく利用しましょう」と杉山医師は言います。

<地域のサービスを調べる>
 まず親が住む自治体の地域包括支援センターや、市区町村の高齢者福祉窓口に相談を。どんなサポートが受けられるか聞き、親だけで暮らすにはどうすればいいか助言をもらいましょう。同時に病院を受診し、今後の見通しについて客観的な意見をもらって。

介護態勢を整える>
 遠距離介護する場合、ケアマネジャーをはじめ、介護スタッフとの関係づくりが重要です。帰省時以外でも、電話やメールで連絡が取り合えるような態勢づくりを。

<地域に頼れる人をキープ>
 帰省時には、親戚や親の友人、近所の人などにあいさつし、連絡先を交換しておきましょう。定期的に様子を見てもらえるようお願いしておくと安心です。

<帰省には「介護割引」を>
 交通費がかさむので、JRや航空会社、バス会社の介護割引を上手に利用しましょう。

(取材・文/神素子)