だからといって、そのたびに入れ歯を作り直さなければならないわけではありません。歯科医師に入れ歯を微調整してもらうことで、使い続けることはできます。鶴見大学歯学部病院補綴科教授の大久保力廣歯科医師はこう話します。

「入れ歯が動きやすくなっているのに放置してしまうと、入れ歯を作り直さなければならなくなることもあります。さらに入れ歯が動くことでほかの歯が影響を受けてむし歯や歯周病になり、歯を失ってしまうと、より大きな入れ歯が必要になることもあるのです」

 また、入れ歯のプラスチック部分が摩耗することで、入れ歯が外れやすくなることもあります。

【Q:入れ歯がにおうのはなぜ?】

A:入れ歯に汚れが付着しているサイン。専用洗浄剤でケアを

 入れ歯はもともと無臭です。それなのに、におうということは、汚れなどの付着物がある証拠。特にプラスチックは中に細かい穴がたくさんあいていて水分を吸収しやすく、細菌が混ざった水分を吸うと、におうようになります。専用ブラシで汚れが残りやすい「バネ(クラスプ)」の内側や歯ぐきと接している凹んだ部分を徹底的にみがくほか、入れ歯洗浄剤につけて、入念にケアすること。それでもにおうようなら、歯科医院で清掃、除菌してもらいましょう。

「歯科医院で手入れしてもらっても、自分で清掃できなければ、再びにおってしまいます。手入れしてもらった際には、清掃の仕方も指導してもらいましょう」(大久保歯科医師)

 においというのは、入れ歯が汚れているサインととらえることもできます。汚れたままの入れ歯を口の中に装着すると、周囲の歯がむし歯や歯周病になるばかりか、誤嚥性(ごえんせい)肺炎を引き起こすこともあるので要注意です。特に唾液中の細菌が肺に流れ込んで生じる誤嚥性肺炎は高齢者の死亡原因にもなる病気。肺炎予防のためにも、入れ歯を清潔にしておくことは重要なのです。

【監修】
鶴見大学歯学部病院 補綴科 教授
大久保力廣(おおくぼちかひろ)歯科医師

(取材・文/中寺暁子)