椅子に座り、伸ばした足の内くるぶしに音叉で振動を与える。10秒以上振動を感知できれば正常だが、神経障害があると10秒未満、あるいは全く感じなくなる(「おいしい暮らしの相談室」から)
椅子に座り、伸ばした足の内くるぶしに音叉で振動を与える。10秒以上振動を感知できれば正常だが、神経障害があると10秒未満、あるいは全く感じなくなる(「おいしい暮らしの相談室」から)

 糖尿病の患者は予備軍も含めて2千万人以上いると推測されている。しかも、長くつき合っていかなければならない病気だからこそ、正しい知識と新しい情報をしっておきたいものだ。週刊朝日MOOK「おいしい暮らしの相談室 糖尿病&高血圧」では、「ドクターが語る 知っておきたい11のこと」として糖尿病が引き起こす合併症などを分析。ここでは糖尿病と勃起障害(ED)について、たけおクリニックの竹尾浩紀総院長が解説する。

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 糖尿病は心筋梗塞のように致死的ではないとはいえ、慢性持続的に体に少しずつダメージがたまっていく病気です。約10年間、高血糖をほうっておくと失明や腎臓の機能が失われて人工透析などになる可能性もあります。2型糖尿病で血糖コントロールの目安となるヘモグロビンA1c値を7%未満に維持できれば、合併症を30年間先送りできるという研究報告もあり、糖尿病でも血糖コントロールさえできれば健康寿命を延ばすことは可能です。

 糖尿病になって初めに症状として出るのは神経障害が多く、多くの症例では発症して4年で足の両側内くるぶしの振動覚の低下がみられます。これは音叉を使った簡単な検査で確認できます。糖尿病性の網膜症や腎症は、血糖値や血圧をきちんと管理して、たんぱく質の摂取量を適正化すると初期の段階であればほぼ治ります。そのため、当院でも年一回は患者さんの目や腎臓、足の検査を行います。

 神経障害は発症すると治りにくく、それ以上悪くならないようにすることが大事です。最も多い神経障害は「感じなくなる」もので、こたつやストーブで足をやけどしても気づかないこともあります。血糖値が急に下がった時に一過性的に「じりじり痛む」単神経障害、胃腸の働きが悪くなる胃腸障害、光を「まぶしく感じる」目の症状などもよくみられます。

■朝立ちがあれば、糖尿病の担当医に相談

 糖尿病により、血液や神経が正常に働かなくなると、陰茎海綿体に十分な血液が流れこまず、十分な勃起を得られない状態、つまり勃起障害(ED)を起こすこともあります。糖尿病性のEDで悩まれている糖尿病患者さんは40~50代が多いです。ただ、EDというのは数値化しにくく、性的活動のアクティビティーには個人差もあり、命に直結していないため、その実態はわかりにくいものです。また相談しにくい事柄だけに、当院では、呼び水になるように、トイレにさりげなくリーフレットを置いたりしています。

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