元々高い空中でのセンスを持っている高梨だが、それをより生かすためにはアプローチの滑りを安定させ、ジャンプ台にしっかり力を伝える飛び出しをすることが必要だ。それを分かっているからこそ、自分の課題を克服するためにコツコツ努力を続けて技術力を高めてきたのだ。大会ごとにジャンプ台の形状がかわるうえ、気象条件に大きく左右されるジャンプ競技で、これだけ勝ち続けられるというのは、他の選手を大きくリードしているからに他ならない。

 そんな実力の高さに加え最近は「キレイになった」と評判になっているが、精神的にも成長して大人のジャンパーへと進化しているともいえる。だからこそW杯勝利記録で男子最多勝のグレゴア・シュリーレンツァウアー(オーストリア)の53勝にあと4勝と迫った今でも、「男子のジャンプの世界とは土俵が違うのでそのトップ選手とは比べ物にならないと思うが、そういう選手と一緒に見てもらえるのは嬉しいことだと思っています」と冷静に捉える。

 そんな高梨だが、まだ果たしていないのは五輪でのメダル獲得と世界選手権の個人での金メダル獲得だ。今年2月には、フィンランドのラハティで彼女にとって4回目の挑戦となる世界選手権が開催される。「世界選手権は獲らなくてはいけないというか、今季はそこを目標にしてやっているので。その後の平昌五輪も踏まえてやっているので、照準を合わせている世界選手権にしっかり調子を合わせるのが必要だと思います」

 もう目前まで迫り、1月14日からの日本4連戦で並ぶ可能性もあるW杯最多勝利記録。その更新もまた、目標にする世界選手権制覇や4度目のW杯総合優勝、そして五輪初制覇へ向けてのステップのひとつでしかないと、高梨は考えているのだ。(文・折山淑美)